番外編·未来の話
窓から温かく優しい日差しが差し込む部屋。
その部屋では、ミコッテ族の老人がロッキングチェアに揺られながら、思い出に浸っていた。
「ベッドに居ないと思ったら、やっぱりここに居たのか…」
そう言いながら部屋に入って来たのは、白銀に黄色いメッシュが入った髪、髪の色と同じ色のオッドアイで、色白のミコッテ族の若い男だった。
「あぁ、すまない。今日は気分が良かったから」
老人がそう言うと、若い男は彼の元へ歩み寄る。
髪は全て白髪、シワだらけの顔、辛うじて視力がある左目はくすんだ緑色。
それが老人の容姿だった。
「あんた、ここの景色好きだよな」
老人の位置から見える窓の景色に目を向ける若者。
すると、老人は目を細めて微笑んだ。
「あぁ。ここからは、義母さんの家が良く見えるからな」
窓から見える小さな家。
その中には、ミニオンよりも少し大きめの人形が飾られている。
それはかつて、老人の義母であり、若者の母の意思が宿っていた物だったが、今はただの人形だ。
この地に隠居を始めた時は、その小さな家の手入れを老人が行っていたが、老化が進み、思うように体が動かなくなってからは若者がその役目を果たしていた。
「そういえば、義姉さん達は?」
「相変わらずだ、あんたと歳がそこまで変わらないってのに、元気なもんだ」
少し呆れ気味に言う若者に、小さく笑う老人。
「変わらないなぁ、あの人は…」
そう言って、老人は目を閉じる。
これまでの人生が、まるで昨日の事のように思い出される。
「俺もまた…、冒険がしたかったな…」
目を閉じたまま、静かにそう言った老人。
それに溜息を吐き、口を開こうとした若者は、老人を見てハッとした。
そして、優しい声で言った。
「おやすみ、アリス。安らかに…」
若者の表情は、何処か悲しげに微笑んでいた。
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