A.告白


それは、エオッターでガウラさんとやり取りをしていた時だった。
「強くなりたい」「自分に自信がない」
の俺の呟きに、ガウラさんが返信をしてくれたのだが、話の流れで、ついウッカリ好きな人がいる事をバラしてしまった。
そこから恋愛相談っぽくなってしまったのだが、「気持ちを言わなきゃ伝わらない」「伝えてみなきゃ相手の反応なんか分からないだろ」と言われ、悩んでいた。
何故なら、好きな人は何を隠そう、ガウラさんの弟であるヘリオ先輩である。
告白してみなきゃ相手の反応なんか分からないの言葉で、「そりゃそうだ」と思い、告白してみようかなぁと思うようになった。

そんな時、冒険者ギルドでハウケタ御用邸で出るという御用邸のワニスを取ってきて欲しいという依頼を受けた。
これは先輩を呼び出す口実になると、連絡を取る。
運良く予定がなかったらしく、快く承諾してもらった。
現地で待ち合わせをし、先輩と合流する。
ルレなんかでよく当たるようになってからは、多少はハウケタのホラーな雰囲気は我慢できるようになったものの、怖いものは怖い。
強ばった表情でハウケタに入る俺を見て、苦笑いされた。
なんとか攻略を終え、運良く御用邸のワニスを手に入れることが出来た。
ボスを倒してホッとした俺はその場に座り込んだ。

「あ~怖かったぁ~…」

思わず口を着いて出る本音。
先輩は一瞬苦笑いを浮かべた。

「以前に比べたら、だいぶ良い動きが出来るようになったじゃないか」
「え?本当ですか?!」
「あぁ、それに、怖いものに挑むって事は勇気がないと出来ることじゃない。あんたは勇気がある凄い奴だよ」

先輩に褒められ、照れくさくなる。

「先輩は優しいですね」
「は?俺は優しくなんかないぞ?」
「そんな事ないですよ!ダメなところは注意してくれるし、アドバイスもしてくれる。今みたいにフォローもしてくれて…、それにカッコイイし…」

怖さから開放された反動か、先輩に対する気持ちが自然と口から溢れる。

「お褒めに預かり幸いだ」

優しく微笑み、そう告げる先輩。

「先輩、優しくてカッコイイからモテそうですよね」
「そんな事ないぞ?」
「え?そうなんですか?」
「暗黒騎士という職業柄、あまり表に出ないからな」
「そっかぁ、なんか勿体ないなぁ。好きな人とかは居ないんですか?」

俺の質問に考える素振りを見せる先輩。

「いないな。そもそも恋愛とは無縁だったしな…。そういうあんたはどうなんだ?」
「へ?俺?!」

質問を返され動揺した。
でも、これはチャンスなのかもしれない。
俺は意を決した。

「…いますよ。好きな人」
「ほう」
「…俺っ、先輩の事が好きです!」

一瞬の間。

「ほう、それはどういう意味で?」

きょとんとした表情の先輩。

「…えっと、恋愛的な意味で…一目惚れだったと言いますか…」

気恥しさでいっぱいになりながら答える。

「そーかそーか、なるほど………って、俺?!」

ようやく理解ができたらしく、明らかに動揺する先輩。

「他に、誰がいるんですか…」
「そ、そうだよな…俺たちしかいないもんな…」

長い沈黙。
なんだか気まずい雰囲気が流れる。
永遠とも思えるような沈黙を破ったのは先輩だった。

「その、なんだ、あんたの気持ちは素直に嬉しいと思う…だが」

先輩は言葉を慎重に選びながら続けた。

「冒険者仲間以上の感情を意識した事が…ない」

予想していたとはいえ、グサリと心を抉る真実。

「あははっ、そうですよね!すみません、突然変な事言って…っ」

無理矢理笑顔を作って笑ってみせる。

「さ、出ましょうか!目的の物は手に入ったし!」

俺はズキズキと痛む胸を悟られないように、そそくさと出口へと向かった。
 

依頼人の元に品を渡し、依頼を終わらせて、俺は先輩に向き直った。

「今日は手伝ってもらってありがとうございました!」
「役に立ったなら良かったよ」

ハウケタを出た直後のような微妙な雰囲気は無くなり、いつもと変わらない空気にほっとする。

「あの、迷惑じゃなかったら、これからも連絡して良いですか?」
「あぁ、構わないぞ」

今の関係が壊れた訳じゃない事が本当に救いだった。
その事が嬉しくて、笑顔で「ありがとうございます」と返す。

「じゃあ、俺は姉さんの所に戻る」
「はい!気をつけて!ガウラさんによろしく伝えておいてください!」
「あぁ」

背を向け歩き出す先輩。
数歩歩いた所で、何かを思い出したかのように振り返った。

「アリス」
「はい?」
「あんた、先輩って呼ぶのやめろ」
「え?」

予想外の話題に、俺は呆気にとられる。

「え?じゃない。俺の名前は先輩じゃなくてヘリオだ。呼び捨てでいい」
「えっ、あっ、ヘ、ヘリオ……さん」

名前を呼ぶとなんとも言えない照れくささが込み上げてきた。

「わぁぁあああっ!なんか照れくさい!」
「…なんでだよ、ただ名前を呼ぶだけだろ」

呆れた声でそう言われるが、事実、照れくさいものは照れくさいのだ。

「呼び捨てでいいって言ってるのにさん付けだし」
「いや、俺誰かを呼び捨てにした事ないですし!」
「まぁ、がんばって慣れるんだな」
「…はい」
「今度こそ行くぞ、じゃあな」

そう言って、先輩はガウラさんの元へと去っていった。
なんだが色んな事が一気に起こったせいで、頭の中が整理できないが、とりあえず先輩との関係は壊れなくてよかったと安堵したのだった。



とある冒険者の手記

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