A.アパルトメント


ウルダハのゴブレットビュート、ナナモ大風車前。
俺は心が踊っていた。
双蛇党の階級を上げ、ギル貯め、アパルトメントの一室を購入したのだ。
さっそく部屋に入り、ハウジングを始め、時間をかけて何とか形になった。
そこで、パートナーであるヘリオさんに連絡を入れた。
アパルトメントを購入したので時間が出来たら来て欲しいと伝えると、その時に連絡をくれると約束をした。
それから3日後、今から来ると連絡があり、俺は地区と部屋番号を伝え、室内で待っていた。
ドアのノックの音に返事をし、ドアを開けると、ヘリオさんの姿があった。

「よう」
「ヘリオさん!いらっしゃい!」

部屋の中へ招き入れると、室内をじっくり観察される。

「初めてのハウジングにしては、なかなか良いじゃないか」

感心したように言われ、何だか心がくすぐったくなった。
俺は「ありがとうございます」とお礼を言い、紅茶の準備をした。

「お茶でも飲んでゆっくりしてください」 
「あぁ、ありがとう」

テーブルにつき、2人で紅茶に砂糖とミルクを入れて一息ついた。

「突然、アパルトメントを買ったと聞いて、少し驚いた」
「ははっ、やっぱり自分の部屋って言うのが落ち着くなーって思ったんで」
「まぁ、宿の部屋を借りるよりは落ち着くよな」

他愛のない会話、それだけでも一緒にいられるのが嬉しい。

「ヘリオさんは、ガウラさんの家に住んでるんでしたっけ?」
「あぁ、間借りさせてもらってる」
「アパルトメントとかは、買わないんですか?」
「あまり必要性を感じないしな」
「そうですか…」

ヘリオさんの言葉に、俺はずっと思っていたことを口にした。

「あのっ、ヘリオさんが良ければ、一緒に住みませんか?」
「………は?」

目を丸くして、驚くヘリオさん。

「アパルトメントなんで、シェアにはならないですけど、でも、ハウステレポで来れるし…、やっぱ、パートナーになったし、一緒に住めたらって思って……」

だんだん気恥ずかしくなり、語尾がどんどん小さくなる。
ヘリオさんは、少し考えるような素振りをした後、口を開いた。

「…あんたが良いなら、構わない」
「え?!本当ですかっ!?」
「あぁ」
「やった!」

いい歳をして子供みたいに喜ぶ俺を見て、苦笑するヘリオさん。
そして、ざっと部屋を見渡して言った。

「ベッド、シングル2つに分けてるのか」
「あ、来客用にと思って置いといたんです。一緒に住んでもらえるか分からなかったし」
「なるほど」
「それと、シンプルなダブルフェザーベットが高くて手が出せなかったのもあるんです…けど」
「けど?」
「一応、2人で寝られそうなのは1つ持ってるんです」
「どんなのだ」

言われて、倉庫から出したのはシュラウドキャノピーベッド。
すると、「良いの持ってるじゃないか」と言われ、速攻でレイアウトを変えた。
キャノピーベッドを設置した途端に、ベッドに俯せに寝っ転がるヘリオさん。
普段あまり、こういった行動を起こすことがない彼が、時折見せる行動は、双子のお姉さんのガウラさんらしさを感じる。
その行動に俺は小さく笑い、俺もヘリオさんの隣に横になった。
すると、腕の中に埋もれていた顔をこちらに向けた。

「慣れたもんだな」
「何がです?」
「隣で寝るようになっての話だ。あんた最初の頃はガチガチに緊張してたろ」
「あー…」

宿で寝落ち事件以降、ヘリオさんと同じベッドで寝るようになったのだが、最初の頃は心臓が破裂するんじゃないかってぐらいに早鐘を打っていた。
今は緊張することなく、当たり前のように横になれていた。

「今では、一人で寝るのが寂しいと感じるぐらいです」
「…また照れくさくなるようなことをサラリと…」
「本当の事ですもん」
「~~~~っ」

俺がニッコリと答えると、ヘリオさんは再び腕の中に顔を隠してしまった。
照れを隠しているのがバレバレで、思わず顔がニヤけた。
こうして、俺とヘリオさんの同棲生活が始まった。


************


同棲生活が始まって1ヶ月が経った頃、ギルド依頼の最中にガウラさんとバッタリ出会った。

「あ!ガウラさん!お久しぶりです!」
「よう!久しぶりだな!」

軽く近況報告をしていると、ガウラさんが「そう言えば…」と俺に聞いてきた。

「最近、ヘリオの奴がウチに帰ってこなくなったんだが、何か知ってるか?」
「え?ガウラさん、何も聞いてないんですか?」
「なんの事だい?」

てっきりヘリオさんが話してるもんだと思って伝えていなかったが、アパルトメントを購入して、そこで一緒に暮らし始めたことを伝えた。

「なるほどね…、住む所が出来たならそうなるか…」
「すみません。てっきりヘリオさんから話がいってると思って…」
「謝る事はないよ。ただ、あいつは私と一緒で、聞かれなきゃ言わないタチだからな、そう言うのはお前から話してもらえると助かる」
「分かりました」

そして、お互いに依頼が残ってるということで仕事に戻った。
その日の夜、帰宅したヘリオさんは、一緒に暮らし始めたことを伝えなかったという事で、ガウラさんにデコピンを食らって帰ってきたのだった。


とある冒険者の手記

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