A.パートナーとしての自覚


アパルトメントに住み始めて2ヶ月。
今俺は、長旅の準備をしていた。
もうすぐ母さんの命日。
墓参りをする為に帰省の準備をしていた。
俺が荷物を纏めているのを不思議に思ったのか、ヘリオさんが声をかけてきた。

「随分大荷物だな。長旅か?」
「はい!あ、ヘリオさんにはまだ話してなかったですね」

俺は事情を話し始めた。
母さんが亡くなって3回忌になる事、家を2週間近く空ける事。
それを伝えると、納得したようだった。

「予定が空いていれば、ヘリオさんも一緒にって思ったんですけど、今、ガウラさんが忙しいからヘリオさんも手伝いしてますし」
「そうだな」
「来年、予定がなかったら一緒に行きましょう!」
「あぁ」

約束を取り付けて、俺は上機嫌になる。

「で、いつ発つんだ?」
「5日後です。帰りはテレポで帰ってくるので、行きと滞在期間で早くて10日、故郷の手伝いを頼まれたら2週間ぐらいで帰って来れる感じですね」
「わかった、その間は姉さんの所に泊まる」
「分かりました」

そのまま荷物を纏めていると、ヘリオさんが口を開いた。

「なぁ」
「はい?」
「あんた、いつになったら「さん」付けと敬語をやめるんだ?」
「へ?」

ヘリオさんの質問にきょとんとする。

「俺は前に呼び捨てで良いとも言ったし、敬語もしなくていいと伝えたと思うんだが…」
「あぁ…、なんと言いますか、癖ですかね。年上にはさん付け、敬語が当たり前になってて」
「パートナーに対してもか?何だか余所余所しくて、むず痒いんだが…」

パートナーの単語にハッとする。
パートナーなのに余所余所しい。
たしか、母さんは父さんの名前を呼び捨てにしていた。
よっぽど育ちが良い人じゃない限り、パートナーの名前をさん付けで呼んでる人を見たことがなかった。
癖と言うには、俺の中に何が根本的な原因がある様に感じ、俺はその日から、その原因を探し始めた。


***********


故郷の島へと向かう船の中、俺はある決意を胸にヘリオさんにパールリンクを発信した。

『はい』
「あ、アリスです。今大丈夫ですか?」
『あぁ、大丈夫だが、どうした?』
「えっと、伝えたいことがあって…」
『なんだ?』

俺は深呼吸をし、ゆっくり話し始めた。

「俺、ずっと考えてたんです。なんで「さん」付けや敬語が抜けないんだろうって。でも、さっき気がついたんです。俺はヘリオさんに憧れてて、背中を追いかけているんだって」

ヘリオさんは黙って聞いてくれている。

「でも、パートナーになったんだから、それじゃダメだって、追いかけるんじゃなくて、ヘリオさんの隣を一緒に歩いていかなきゃいけないんだって、気がついたんです」

俺は目を伏せ、ハッキリと言葉にした。

「だから、隣で歩いて行けるように、対等でいられるように、さん付けも、敬語もやめる。だから、改めてこれからよろしくな!ヘリオ!」

少しの沈黙のあと「あぁ、よろしくな」と返事が返ってきた。
その声はとても優しい声だった。



とある冒険者の手記

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