A.虹


アリスは、ザァーと言う音で目が覚めた。
クガネにある望海楼の一室。
昨夜、義姉であるガウラと潮風亭で飲み会をし、望海楼で宿を取った。
体を起こし窓の方を見ると、音の原因を突き止めた。

「雨…か」

出来れば朝日で目覚めたかったなぁとボヤきながら、服を着替える。
宿を出る支度をし、受付へと向かうと、そこには義姉の姿があった。

「おはようございます!ガウラさん」
「おはよう、アリス」
「二日酔いとかは大丈夫ですか?」

昨晩、酔いつぶれた彼女を望海楼まで運んだアリスは、体調を心配して尋ねた。

「少し頭が痛いけど、酷くはないよ。迷惑かけたね」
「いえ!気にしないでください」

ガウラの言葉に、笑顔で返すアリス。
2人はチェックアウトを済ませ、外に出ると、雨が上がっていた。

「さっきまで降ってたのに…」
「どうやら通り雨だったみたいだね」
「ですね。濡れずにすみそうで良かった」
「アリス、お前朝食はどうするんだい?」
「潮風亭で軽く済ませてしまおうと思ってます」
「なら、昨日の迷惑料ってことで奢らせて貰うよ」

アリスは慌てて「気にしなくていいですって!」と申し出を断る。
だが、ガウラは引かなかった。

「そうはいかないよ。昨日の飲み会の代金。お前が全額払ったんだろ?」
「それは元々俺が全額払う気でいたんで、俺は気にしてないです」
「あのねぇ…」
「いつも、いろいろお世話になってますし、そのお礼も兼ねてって」
「お前、そんなんだから金が貯まらないんだろ?お前が払った金額の半分にもならないかもしれないけど、このままじゃ私の気がおさまらないんだよ!」

自分が逆の立場だったらと考えたアリスは、気持ちが分からなくもないと納得した。

「分かりました。でも、迷惑料とかではなく、弟として有難く甘えさせてもらいます」

その言葉に、ガウラは「分かればいい」と、潮風亭へと歩き出す。
そして、ふと何かに気がついたように足を止めた。

「どうしたんです?ガウラさん」
「虹だ」

言われてアリスが空を見上げると、空には大きな虹がかかっていた。

「わー、綺麗ですね」
「そうだねえ」
「ヘリオと一緒に見たかっなぁ」

思わずボソリと呟くアリスに、ガウラはニヤリとしながら口を開いた。

「悪かったねぇ、弟じゃなくて」
「あっ!別にそんなつもりで言ったんじゃ…っ」
「あはは!冗談だよ!お前は本当にからかい概があるよな」
「もー、からかわないでくださいよ…」

軽く拗ねるアリスを見て、ガウラは更に笑う。

「さぁ、さっさと朝食済ませよう!」

言って、スタスタと歩き出すガウラをアリスは慌てて追った。
食事中に温泉の話をガウラから聞いたアリスは、また虹が見れれば良いなぁと淡い期待を抱きながら、ヘリオを温泉に誘おうと決めたのだった。



とある冒険者の手記

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