A.切なる想い


木人を叩いていると「夕飯出来たぞ」とヘリオが呼びに来た。
顔を流れる汗を拭き、武器を片付け家に入る。
鼻をくすぐるいい香りに、反射的に腹の虫が鳴った。
席に着き、「いただきます」と食事を始める。

「んーっ!やっぱ、ヘリオの料理は美味いな!」
「そうか?普通だと思うが…」
「そんな事ないよ!いつも思ってるけど、凄く美味い!」

そんな会話をしながら食事を終え、俺は食器を洗い、その後シャワーで汗を流す。
着替えて地下の暖炉の前に行くと、ヘリオはフロアソファに座り考え込んでいるようだった。

「ヘリオ」
「アリスか…シャワーから上がったのか」
「うん」

俺はヘリオの隣に座る。

「なぁ、ヘリオ」
「ん?」
「俺さ…、怖かったんだ」
「なにが?」

俺の突然の言葉に、ヘリオはキョトンとする。

「気が付いてしまった事を話すのが…怖かったんだ」
「なんでだ?」

イマイチ容量の得ないと、ヘリオは首を傾げる。

「小さい時にクガネで言い伝えられてる御伽噺を教えてもらったことがあるんだ。鶴の恩返しって言う話なんだけど」
「ほう?」
「ある青年が罠にかかった鶴を助けるんだ。その後、青年の家に美しい女性が来て、青年と女性は結婚するんだ。ある日、女性が機織りをするって言うんだけど、その時に部屋を絶対に除くなって青年に言うんだ」
「それで?」
「女性は美しい織物を完成させて、青年がそれを売りに行くと良い値段で売れて、その後しばらく織物を売って生活をするんだ。その間青年は約束を守ってるんだけど、ある日女性が「織物はこれで最後です」っていったんだ。その時青年はそれを承諾するんだけど、町で同じ織物をどうしても欲しいと言う人がいて、仕方なくそれを女性に伝えて作ってもらうように頼んだ。女性は「本当にこれで最後ですよ」って言って機織りをするんだけど、青年は最後の最後に約束を破って部屋を覗いてしまうんだ」
「……」
「するとそこには女性ではなくて、鶴が自分の羽を使って機織りをしていた。その鶴は青年が助けた鶴だったんだ。鶴は「見てしまいましたね。もう一緒にはいられません」って言って青年の元を去ってしまうんだ」

御伽噺を言い終え、ヘリオをまっすぐ見つめる。

「だから、気が付いてしまった事を伝えてしまったら、ヘリオが俺の元からいなくなってしまうんじゃないかって…、凄く怖かった」

俺はそう言って、ヘリオを抱きしめた。

「ヘリオが決めた事は全部受け入れる。その時が来たら、隠さずに話して欲しい。だから、それまでは今まで通り、ヘリオとして俺の傍にいて欲しい…」

震える身体を誤魔化すように、抱きしめている腕に力が入る。
しばらくの沈黙。
そして、俺の背中にそっと腕をまわされた。

「……分かった」

その言葉だけで、一気に涙が零れた。

「ヘリオ、ありがとう…」

俺がそう言うと、優しく背中を撫でられた。

「大好き…愛してる…」

震える声で伝えて、俺はしばらくヘリオを抱きしめ続けた。



とある冒険者の手記

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