A.それぞれの想い


最近、家に見慣れない道具が置いてあることに気がついた。
自分のものでは無い。
となると、これはパートナーであるヘリオのものであることは間違いなかった。
というのも、一緒に暮らしていたリリンちゃんは、去年の年の暮れに一人暮らしを始め、今この家に住んでいるのは俺とヘリオだけだからである。
そして今、その道具をヘリオが手入れをしていた。

「ヘリオ、その見慣れない道具は?」

俺が尋ねると、ヘリオは「説明してなかったな」と話し始めた。

「賢者で使う武器、賢具だ」
「賢者?」
「あぁ、これから戦いが激化するだろうから、ジョブをバリアタイプのヒーラーに変えようと思ってな」

ヘリオが時々占星術士を使っていたのを思い出す。
ひょっとして、予行練習的な感じだったのだろうか?

「それにしても、ジョブを変えるなんて珍しいじゃないか。ずっと暗黒騎士で来てたのに…」
「俺も大剣以外は持つ気は無かったんだがな。だが、そうも言ってられないだろ。戦いが激化すれば、怪我をする事も増える」

その言葉に「それはそうだけど」と返す。
今まで、魔力を使う事を極力避けていたヘリオ。
それが、避けられない状態になるほど、今回現れた敵は危険度が高いのだろうと予想ができた。

「それに…」
「それに?」
「あんたがタンクをする事が多くなったしな。なら、ヒーラーをやるのも悪くないと思ってな」
「なるほど」

たしかに、タンクをやる事が多くなってきたし、戦士にジョブを変えようとは思っていた。
だが、今の話を聞いて少し気が変わった。

「じゃあ、俺、ナイトにジョブを変えようかな」
「ナイト?戦士じゃなくてか?」
「うん!バリアヒーラーなら、仲間を庇う事が出来るナイトになるのも悪くないかなーって」
「これはヒーラーとして責任重大だな」

そう言って苦笑するヘリオ。 

「それにさ、俺もガウラさんのサポートが出来れば義弟として嬉しいし、少しでも自信に繋げたいしさ」
「あんたらしいな」

優しく微笑まれ、俺は「へへっ」と笑う。
実はタンクをしていたのも、理由があった。
敵の攻撃を全て引き受けるタンク。それは命の危険があると言うこと。
ずっと、ヘリオの代わりになれればとタンクに手を出していたのだ。
思惑通りになって、その嬉しさも込み上げる。
何があっても絶対に守り抜き、自分も生き抜く。
これは、ガウラさんとヘリオから学んだものだ。
まだまだ2人には劣るが、頑張ろうと気合いが入る。

「アリスお兄ちゃん!ヘリオお兄ちゃん!ただいま!」

元気よく入ってきたリリンちゃん。

「おかえり!」
「おかえり、リリン」

笑顔でヘリオと出迎える。
そして、しばらくするとガウラさんが友人を連れてヴレンティオンのチョコクッキーを配りに来た。
それを2人に配り、3人でお茶をしながら、積もる話をしたのだった。


とある冒険者の手記

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