A.金平糖
それは、アリスが何気なくクガネの小金通りを歩いている時だった。
「ちょいと!そこのお兄さん!」
声をかけられ、キョロキョロと見渡すと、お店のおばちゃんが手招きをしていた。
「俺…ですか?」
「そうだよ!ちょっとウチの品を見てっておくれよ!」
見るだけならと、アリスが店に立寄ると、そこには色とりどりの金平糖と、様々なサイズの小瓶が並んでいた。
「お兄さんの指に着けてる指輪、えおるぜあのえたぁなるりんぐって言うんだろう?」
「はい、そうですけど…」
「なら、是非ウチの商品を買ってっておくれよ!」
関連性が分からず困った笑顔を向けると、おばちゃんは生き生きと話し始めた。
「この地域ではね、結婚相手や恋人に、気持ちをさりげなく伝える為に金平糖を渡すのさ!」
「へぇー、そうなんですね!」
そう言われると、興味が湧いたアリス。
そう言えば、もうすぐエターナルバンドをして2回目の記念日になる事を思い出す。
「もうすぐ記念日だから、1つ買っていこうかなぁ」
「よし来たっ!うちは、金平糖を入れる小瓶なんかも好きなのを選べるから、世界に一つだけの贈り物になるよ!」
おばちゃんのその言葉にまんまと乗せられ、アリスは真剣に小瓶を選び、金平糖を詰めてもらい、購入した。
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数日後、ヘリオはクガネに用事で来ていた。
用事が一段落し、疲れを軽く癒す為、アリスから貰った金平糖を口にしながら歩いていた。
「そこの綺麗な白いお兄さん!」
声をかけられ振り向くと、40代ぐらいの女性がヘリオの元に小走りで駆け寄ってきた。
「何か用か?」
要件を尋ねると、女性はヘリオの持っている金平糖が入った小瓶を指さしながら言った。
「それ、ひょっとして黒と赤紫色の髪の子に貰ったのかい?」
「?そうだが…」
何でそんなことを知っているんだと不思議そうにしていると、女性は「やっぱり!」と両手を叩いた。
「それはね、うちの店の商品だったのさ!数日前に声をかけたら記念日だからって真剣に選んでいたんだよ!まさか、お相手がこんなに綺麗なお兄さんだったなんてねぇ!」
女性はニコニコしながら語った。
「ところでお兄さん、金平糖を贈る意味を知ってるかい?」
「いや、相手からは「結婚相手や恋人に贈ると良いものだ」としか聞いてないが…」
ヘリオの言葉に、女性はニヤリと微笑み「耳をお貸し」と手招きをする。
それに従うと、女性は小さな声で耳打ちをした。
「金平糖を贈る意味はね、永遠の愛を意味するのさ」
それを聞いた途端、一気に顔が熱くなるヘリオ。
それを見て、女性は「若いねぇ」と豪快に笑ったのだった。
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