A.忍者と踊り子


ウルダハのルビーロード国際市場前に人だかりが出来ていた。
アパルトメントの様子を見に行った帰りに、そこを通りかかったアリスは、人だかりを不思議に思い、足を止めた。
人だかりの中央にいるのは、ガウラの友人であるナキだった。
周りの人達が口々に「良い踊りだったぞー!」と称賛しているのを聞いて、初めてナキが踊り子であることを知った。
すると、ナキがアリスに気が付き、人だかりを掻き分け、アリスの手を掴んだ。

「えっ?なんですか?!」

突然のことに驚いていると、ナキは満面の笑みを浮かべた。

「お兄さん、一緒に踊りましょう!」

営業用の言葉をかけられる。
周りから「兄ちゃん頑張れー!」と野次を飛ばされれば引くに引けない。
困ったように笑みを浮かべながら、ナキに連れられ、先程までナキが居た場所に立つ。
踊るのであればと、アリスはミラプリを変えた。
そして、円月輪ではなく双剣を手にした。
それを見て少し驚いた様子のナキだったが、すぐにプロの顔になる。
そして、演奏が始まる。
この曲調なら、故郷の舞の応用が効くと判断したアリスは、踊り始めた。
アリスの動きに合わせて踊りを繰り出すナキ。
時折、円月輪と双剣を交じわせながら観客を魅了した。
踊りが終わり、お辞儀をすると、観客からは歓声と拍手が降ってきた。
「兄ちゃん良かったぞ!」と声をかけられ、「ありがとうございます」と返した。
観客が捌けると、ナキが声をかけてきた。

「アリスくんも踊れたんだね!凄かったよ!」
「ありがとうございます!いや、まさか踊ることになるとは思ってなかったから緊張しました」
「時々、観客から人を選んで一緒に踊るんだ!ねぇ!アリスくんはどこでその踊りを覚えたの?」

ナキの問に、アリスは故郷の祭りの話をした。
女装をして踊るんだと伝えると、納得した表情をするナキ。

「だからかぁ!踊ってる時のアリスくん、女性に見えてちょっとドキッとしちゃった!」
「そ、そうですか」

女性に見えたと言われ、複雑な気持ちになるアリス。
そんなアリスの様子を見てクスクスと笑うナキ。

「そういえば、アリスくんは忍者って聞いたけど、さっきはナイトの格好してたよね?」
「あ、はい。最近ジョブを変えたんです。大切な人達を守りたくて…。俺、すぐに無茶して自分の体を盾にしてしまうことがあるから、ナイトの方が良いかなって」
「そっか!でも、忍者でも人は守れるんじゃないかな」

ナキはそう言って、明後日の方をチラッと見た。
その行動を不思議に思ったが、余計な詮索は失礼かと思ったアリスは、話を続けた。

「相手を守って自分も生き抜く。それを体現させるなら、俺にはナイトが合ってるかなって。散々大怪我して、ガウラさんにもヘリオにも心配かけて怒られてましたから」
「なるほどね」

すると、ナキはアリスを真っ直ぐ見た。

「これからも、ガウラと弟くんをよろしくね!」

笑顔でそう言われ、アリスは「はいっ!」と元気よく返事をした。


***********


1人になったナキは人気の無い路地裏で足を止めた。
すると、彼女の目の前に現れたのは色黒の男のミコッテだった。

「やっぱり、今日も来てくれてたんだね」

笑顔で言うと、困った顔をするミコッテ。

「全く、相変わらずナキは鋭すぎるな…」

溜息をつきながら、彼はナキを見た。

「あの男と知り合いだったのか」
「アリスくんのこと?知ってるの?」
「あぁ、最近ウチの一族の者だと判明した新米だ」
「そっか…、そうだったんだ」

そう言うと、ナキはふと何かを思いついた顔をした。

「ねぇ、ルヴァくん!これから一緒にゴールドソーサーに行かない?昔みたいに一緒に遊ぼうよ!」
「は?」

唐突に言われ、目を丸くするルヴァ。

「ね?良いでしょ?行こうよ!」

無邪気に言われ、苦笑した。

「昔から変わらないな、ナキは。分かったよ」
「やった!」

ルヴァは一般人の姿に変装し、ナキと一緒にゴールドソーサーへと向かったのだった。



とある冒険者の手記

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