A.義母と義理の息子


「ジシャさん!お久しぶりです!」
「おや、アリス。久しぶりだね」

白き一族の集落跡。
アリスは1ヶ月半ぶりに、この地を訪れた。

「今回は随分間が空いたけど、忙しかったのかい?」
「あ、いえ。ちょっと色々ありまして」

立ち話もなんだと、手短な岩をみつけ腰をかけるアリス。
そして、今回期間が空いた経緯を話し始めた。

「そんなに思い詰めていたのかい?」
「はい、今思い返してみても、自分で呆れるぐらいに思い詰めてましたね」

苦笑しながら答えるアリス。

「でも、お陰で色んなことを学べたので、良かったのかなって」
「終わりよければなんとやら、と言うやつだね」
「はい!東方の方で刀の扱いも教わる事が出来ましたし」
「そうかい」

晴れやかに話すアリスに、ジシャはうんうんと話を聞く。

「それで、今日は義姉さんに迷惑かけたことを謝りに行った帰りに寄ったんです。期間が結構空いてしまっていたので」
「義姉さん?」
「あ、ガウラさんの事です!前回ここに来る少し前に、義姉さんって呼ぶようになって…」

少し照れくさそうに言うアリス。
そんなアリスにジシャは言った。

「そうかい。じゃあ、私のことはいつ義母さんと呼んでくれるんだい?」
「?!」

驚いたアリスの反応に、思わず笑うジシャ。

「そんなに驚くことかい?」
「あ、いえ、義姉さんにも同じように言われたのがきっかけだったものですから」

アリスの言葉に更に笑うジシャ。
ヘラの時とは性格が変わった娘。
今の娘は自分の若い時にそっくりだと、ジシャは感じていた。

「で、呼んでくれるのかい?」
「ジシャさんが良いのであれば…」
「私は構わないよ」

そう言われ、アリスはガウラの時と同様に照れくさそうに「義母さん…」と呼んだ。

「そんなに照れくさそうにしなくても…。ガウラの時もそんな風だったのかい?」
「はい…」
「怒られたろ?」
「はい…よくご存知で…」

それを聞いて、三度笑うジシャ。

「そんなに、笑わないでください」と恥ずかしそうに言うアリス。

「いや、すまないね。こんな風に笑う機会が少ないものだから」
「まぁ、義母さんが楽しいなら、別にいいですけど…」
「ふふっ、照れてた割には順応が早いじゃないか」

なんだか嬉しそうに話すジシャに、アリスの顔も綻んだ。

「俺、ヘリオとパートナーになる前は天涯孤独だったんです」

アリスの話に耳を傾けるジシャ。

「故郷で、病弱な母さんと2人きりで暮らしていたんですけど、病が悪化して母さんは亡くなったんです。それで、顔も知らない父さんを探すために、このエオルゼアに来たんです」

アリスは遠い目をして語る。

「ヘリオとパートナーになった後に、父さんがだいぶ前に亡くなってた事も分かったんですけど、母さんの時ほどショックは大きくなくて。やっぱ、血の繋がりはなくても、絆で繋がった家族や身内の存在は、凄い心の支えになるんだなって思いました」

そう言って、穏やかな表情をジシャに向けるアリス。

「だから、嬉しいんです。義姉さんと義母さんが出来たことが。大事な身内が出来たことが、本当に嬉しい…」
「そんなふうに言われると、こっちが照れくさくなるな」

ジシャの言葉に、今度はアリスが笑う。

「こんな言い方はおかしいのかもしれないけど、義母さんは長生きしてください。まだまだ、話し足りないですから」
「おや、そんなお願いをされるとは思わなかったな」
「俺、結構我儘なんで」
「これは困った息子だな」

2人は笑い合う。
そして、いつもの様に話をし、陽が傾き始めた頃、アリスは帰る準備を始めた。

「気をつけて帰るんだよ」
「はい!今日も話に付き合っていただいて、ありがとうございました!それじゃあ義母さん、また来ますね!」

そう言って手を振り、アリスは帰って行った。
ジシャは、その背中を見送ったのだった。




とある冒険者の手記

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