A.黒の祖に関する伝承
「あらあら、アリスじゃないか」
「お久しぶりです、おばあちゃん!」
ザナラーンにあるシルバーバザーに、アリスは祖母に逢いに来ていた。
「前に逢った時より、いい顔をしてるねぇ」
「あははっ!まぁ、色々吹っ切れたって言うのかな?」
「そうかい、よかったねぇ」
優しく微笑み、頷く祖母。
その表情は、母のラナにそっくりだった。
「あ、これ、スターライトプレゼントです!」
「おやおや!いいのかい?」
「はい!どうぞ、受け取ってください!」
祖母はアリスからのプレゼントを受け取り、"ありがとう"と礼を述べる。
「それで、今日来たのは何か聞きたいことがあったんだろう?」
「え?どうしてそれを?」
「ふふっ、2回しか会ってなくても可愛い孫の事は分かるよ。お前さんはラナに似ているからねぇ」
祖母の言葉に、[母親の凄さ]が伝わる。
アリスは少し参ったなと言うように苦笑いをしながら、話し始めた。
「俺、今自分の血筋のルーツを調べてて、おばあちゃんならカ族の事を知ってるんじゃないかと思って」
「なるほどねぇ」
「初めて会った時、"長く続くカ族だった"って言ってたのを思い出して、知りたいなって」
アリスの言葉に、祖母は"喜んで"と微笑み話し始めた。
今は無くなってしまったカ族の集落だが、その歴史は長かった。
氷河期にエオルゼアに移り住んでから、場所を変えることなくずっと続いたカ族。
それは、長となる男の実力と統率力があったからであった。
そして、種族柄もあるかもしれないが、一族に産まれる男は1人しか産まれなかった。
その1人が長を引き継ぎ、そして男が1人産まれ、その子供が長を引き継ぐ。
それを繰り返してきていた。
だが、1度だけ男が2人産まれた年があった。
産まれた2人目の男は、狩りの才はあるのに、戦いになると迷いがあったのか、盾を構えて耐えるだけというスタイルだったそうだ。
2人目は色々悩み、一時期は黒魔法を旅人に教わり使ってみた事もあったようだが、彼と相性が良い属性は闇属性だったという。
禍々しいその闇属性の魔法に、彼の父は魔法を使う事を禁止したと言う。
それから2人目は、今まで通り盾を構える事しか出来ない生活を送った。
そして、父が族長を引退する時、2人目は兄に族長の座を譲り、カ族の集落を出て行ったそうだ。
そこまで聞いて、アリスは祖母に身を乗り出した。
「その2人目はどうなったんですかっ!?」
「暫くは風の噂で傭兵をしていたと言われてたみたいだ。その後、船に乗ってエオルゼアを出た噂が流れたらしいが、それからは行方は分からなかったらしい」
「そうですか…でも、なぜ2人目の噂まで…?」
「族長になった兄が、腹違いとはいえ、弟の身を案じていたからだと思うよ。この話も、その兄の日誌の記述から、カ族に伝わっていたものなんだよ」
アリスは話を聞いて考え込んだ。
やはり、黒の祖は魔力が無いわけではなかった。
その様子を見て、祖母は口を開いた。
「その2人目が気になるのかい?」
「あ、えっと。なんと言いますか。どうやら、父さんの先祖がその2人目の男性の可能性があるんです」
驚いた顔をする祖母に、アリスは暗殺者の話しは避け、簡単な一族の話をした。
先祖の名前。その先祖は剣術士から刀に持ち変え、侍として武力を極めていた事。そして、彼の子孫達は、今尚その武力を活かして活動していることを伝えた。
「そうだったのかい」
「はい、ただ、色々複雑な事になってて、それを解決する為に調べてたんです」
「おや、そうなのかい」
「おかげで、少し分かったこともあったので助かりました!」
「それなら良かった。こんな老いぼれでも、役に立てると嬉しいもんだねぇ」
それから、少し近況報告をし、祖母に「今度、パートナーと義姉を逢わせたい」と伝え、アリスはミストへと戻った。
書斎デスクに座り、考え込むアリス。
魔法を禁止されたカ·ルナ。
タイミングは不明だが、それが原因で枷を付けた可能性も浮上し始めた。
なら、ニアの方は?
考えがグルグルと頭を巡る。
オールドシャーレアンでヘリオと合流したら、この話をしようとアリスは決めた。
そして、今回分かったカ·ルナの相性属性。
美しい魔法を扱うニアと、対象的な禍々しい闇魔法と相性が良いカ·ルナ。
2つ枷が外れて生まれてきたヘラ、その儀式の時に妖異が誘われたのは、もしかしたらカ·ルナの闇属性の要素も含まれていたからでは無いのだろうか?
新たな可能性を確かな物にするにはどうするか?
ヘラと同じように異例として産まれた自分で試せばいい。
だが、闇属性魔法に関するものは、一般的には出回っていない。
アリスは闇属性の魔法を調べる為、何度目かになるグブラ幻想図書館を訪れる事になったのだった。
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