番外編·魔力の枷
「お前さんを護り続けたい」
そうニアに伝えてから、ルナとニアの距離は急速に縮まって行った。
だが、ルナには1つ懸念があった。
それは、自分が扱える闇属性の魔法についてであった。
ニアと出会って暫くした頃に、ニアに問うたことがあった。
"なぜ武力を使わないのか?"
その問いに、ニアは答えた。
"必要が無いと思い、枷を付けて使えないようにした"
それを聞いて驚いたが、理由を聞けば納得出来ることであった。
だが、そのせいでバランスは崩れ、魔力が増大する原因となったと言う。
その流れで、魔法の属性の話を聞いた。
闇は活性を促す。
それが、ルナには引っかかっていた。
彼女は戦を避ける為に武力に枷をした。
たが、彼女の想いとは裏腹に、今度は魔力の増大が、戦の種にならんとした。
現に、彼女の魔力を狙っていた輩がいた。
自分が彼女と子を成した時、どうなるのか?
ルナは、ニアに自分の持つ属性を伝えることを決めた。
「ニア、話があるのだが…」
「なんです?」
夕飯を終え、片付けが終わった時を見計らって、ルナは話し始めた。
自分の使える闇属性の魔法のことを。
最初は驚いた表情をしていたニアも、次第と真剣な表情に変わっていった。
そして、ルナは1番懸念していることを伝えた。
「もし、子が出来た時、子が私の闇属性を強く持っていたら、枷の存在がどうなるか不安がある」
「それはどう言う意味です?」
「お前さんは枷を付ける前から、元々の魔力も強かったのであろう?その子供ともなれば、魔力も強かろう。その子供が闇属性を強く持ってしまっていたら…」
ルナの言わんとしていることに気がついたニア。
「闇は活性を促す。その効果が武力を活性化させ、枷を壊す…と?」
「それもあるが、1番怖いのは魔力を活性化させてしまった時だ。子を宿した時に、子を介して魔力を活性化させてしまったら、魔力の暴走が起こりかねないのではないか?」
「………」
「もし、そんな事が起こってしまえば、私は自分を恨んでも恨みきれぬ」
ルナの言葉に、ニアは考え込んでいた。
暫く続く沈黙。
そして、ニアは重い口を開いた。
「可能性は無いとは言いきれません…」
「やはりそうか…」
「それで、この話をするという事は、何か考えがあるのでしょう?」
ニアの問いに、ルナは決意をした表情で答えた。
「私の魔力に枷を付けてくれ」
思いもよらない申し出に、目を見開くニア。
「そうしたら、バランスは崩れ、貴方の武力が増大しますよ?」
「覚悟の上だ」
困惑するニアに、ルナは言った。
「私に必要なのは、お前さんを護る為の武力だ。それに、夫婦と言うのはお互いを補い合い、助け合うものであろう?お前さんは魔力を、私は武力を。まさに理想の夫婦の形ではないか!」
ニカッと笑うルナに、顔を真っ赤にするニア。
「人が真剣に話を聞いていれば…っ!貴方って人は…っ!」
「ん?私は真剣だぞ?」
「~~~っ!」
「あいたっ!叩くな叩くなっ!」
顔を真っ赤にしながら、ルナをポカポカ叩くニア。
これは堪らんと逃げようとするルナ。
何とも微笑ましい夫婦喧嘩の様子であった。
後日、ニアはルナの魔力に枷を付けた。
そして、いつの日か時が来た時に枷が外れるように、自分と同じ条件を付けたのであった。
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