A.聖芒祭
ミスト·ビレッジにある、アリスの自宅兼FCハウス。
庭に出てきたアリスは、一面の白銀の世界に呆然としていた。
「積もったなぁ。これは買い物行く前に雪掻きしなきゃだ…」
溜め息を吐いて、一旦室内に戻るアリス。
服を着込み、服の中には寒さ防止のファイアクリスタルを仕込み、雪掻き用のスコップを手に取り、再び外に出る。
取り敢えず、庭から敷地外までの道を確保する為に除雪を始めた。
道が確保出来ると、次はチョコボの小屋の周りの雪掻きを始める。
すると、テレポの音が聞こえ振り向くと、そこには義姉のガウラの姿があった。
「義姉さん!おはようございます!」
「おはよう!雪掻き中かい?」
「はい!義姉さんは何か用ですか?」
「いや、暇だったから顔を出しに来たんだ」
ガウラらしい言葉に"なるほど"と小さく笑うアリス。
「義姉さん、運が良かったですね」
「どういうことだい?」
「実は買い物に行こうと思ってたんですけど、外に出たらこれで…」
「雪掻きがなきゃ、入れ違いだったってことか」
「そういう事です」
それを聞いたガウラは、少し考え込み、口を開いた。
「雪掻きは私がやっとくから、お前は買い物に行っといで」
「え?でも、今から行っても、戻ってくるの昼過ぎですよ?」
「構わないさ。何かしてないと落ち着かないしな!雪掻きが終わったら、中で待たせてもらうよ」
「分かりました。あ、お昼はキッチン使って何か作って食べててください」
「あいよ」
アリスは雪掻き道具をガウラに渡し、「行ってきます!」と言って転送網利用券(双蛇党)を使ってグリダニアへと飛んだ。
そして、マーケットの方へと足を進める。
そして、店で足を止め、店員に話しかけた。
「すみません。取り寄せをお願いしてた、フ·アリス·ティアです」
「あぁ!ハーブティーをご注文だった方ですね!」
そう言うと、店員は奥の方から品を取り出し、中身を確認し、紙袋に入れて手渡す。
ギルを支払うと、"ありがとうございました"とお辞儀をされ、アリスは次の目的地へと移動を始める。
オールドシャーレアン行きが決まった事もあり、その準備をする為の備品の買い出しである。
手帳のページが残り少ない為、ページ数が多い物を探し購入。
野営の為の部品や、武器の手入れ道具、義姉と行動することも考えエーテル薬も購入。
そして、ウルダハへとテレポし彫金師の店へと足を運んだ。
「あら!フ·アリスさん!」
「こんにちは!セレンディピティさん!」
彫金師をしていたこともあり、すっかり顔馴染みになったギルドマスターと、軽く挨拶を交わす。
「今日はどんな御用で?」
「アクセサリーを見に来ました!」
今、義姉が家に来ているので、義姉にスターライトプレゼントを渡したいと言う旨を伝えると、セレンディピティは"それなら!"と出てきたのはイヤリングだった。
「新作のトリテレイアイヤリングです!錬金術ギルドから仕入れたんですよ!」
「へぇ!上品ですね!」
これなら義姉にも似合いそうだと、赤い色の物を手に取る。
そして、義姉に渡すなら一緒にとヴァルの物として青い色も購入した。
「包みを別にしてください」
「分かりました!分かりやすいように色を別に包装しておきますね!」
「ありがとうございます!」
アリスは包みを受け取り、自宅へとテレポした。
自宅に着くと、ガウラは木人と睨めっこをしていたが、直ぐにこちらに気が付き、顔を向けた。
「義姉さん、ただいま戻りました!」
「やぁおかえり、アリス」
「何してるんです?」
「木人が壊れそうだったからね、軽く修復中だよ。といっても材質的に限界なんだろう…新調したほうがいいかもしれないな?」
「そうですか…考えとかなきゃ。……?」
鼻をくすぐる美味しそうな匂いに気がつく。
「なんか、いい匂いしますね」
「あぁ、ナキだよ。雪かき中にやって来てね、星芒祭のお祝いしたいんだとさ。ランチを作ってくれると言ってくれたものだから、キッチンを貸したんだけどよかったかい?」
「ナキちゃんが!?彼女なら貸しても大丈夫でしょう!」
「ならよかった。そろそろ入ろうか、いい匂いがしてるってことは出来上がりも近いんだろうさ」
木人を片して、いい匂いがする室内に入り、リビングへと降りると、テーブルに様々な料理が並んでいた。
その料理の数々に、思わず「わぁ……」と間の抜けた声が出た。
「あ、アリスくん、こんにちは!キッチン借りてまーす!」
「こんにちはナキちゃん!料理作ってくれてありがとうございます!」
「ふふふ〜」
「私に任せなくてよかったな?」
ニヤリとするガウラに、アリスは「えっ!?」とガウラを見る。
「それはどういう意味です?」
「私はそんなにレパートリーが多い訳じゃないからね。こんなに種類は作れない」
「なるほど」
「ほらほら!2人とも座って!」
ナキに促され、席に着く。
そして、料理を食べ始める。
「んーっ!!美味しい!」
「ありがとう!」
ナキの料理の味は、どことなくヘリオが作るものに似ていた。
ひょっとすると、白き一族の味付けなのだろうか?
少し、ヘリオがいない寂しさがアリスの中に顔を出す。
それを誤魔化すかのように、話を振った。
「ヘリオが作る料理の味に似てますけど、故郷独特の味付けですか?」
「うん!そうだよ!…あれ?同じ故郷って話したっけ?ガウラに聞いたの?」
「いえ、分かってしまったと言うか…なんというか…」
口篭るアリスに、ガウラは言った。
「アリス。ナキは黒き一族のことを知ってるから、気にしなくていい」
「え?そうなんですか!?」
「うん!私の担当のルヴァくんから聞いてるよ!アリスくんが黒き一族だって事も!」
「あ、そうなんですね!」
それを知ったアリスは、ホッとしたように話し始めた。
「俺、白き一族のエーテルの匂いが分かるんです。だから、ナキちゃんが同じ故郷なんだって気がついたんですよ」
「「匂い?」」
ナキとガウラは顔を見合わせる。
「黒き一族でも、この能力を持って生まれるのは極稀なんだそうです」
「へぇー!そうなんだ!ちなみに、どんな匂いなの?」
「ナキちゃんは、甘い香りの中に柑橘系の香りが混ざった感じです。義姉さんとヘリオは、ほんのりと甘い花の香りがしてますね」
「ほう?」
「匂いの強さでエーテル量も分かるんですよ」
「だから、儀式が終わった直後に、直ぐに変化に気がついたのか」
「そういう事です」
なるほどなぁと、ガウラは納得した。
「アリスくん、黒き一族なら、蝶の痣がどこかにあるの?」
「ありますよ。暗い所にいる時にだけ、右の脇腹に出てきます」
「そうなんだ!私たちの一族の純血も、儀式が終わると5枚花弁の白い花の痣が出るんだよ!混血は儀式をしないから、4枚花弁白い花の刺青を入れるんだ!」
「へぇー!そうなんですか!」
「おや、知らなかったのかい?」
「ヘリオから何も聞いてないです」
「まぁ、話す必要が無いと思ったら言わないか…」
「ところで、ガウラはどこに痣があるの?」
ナキが尋ねる。
「右肩にあるよ。見るかい?」
「「えっ?!」」
ポカーンとするナキとアリスを尻目に、服に手をかけ始めるガウラ。
それにハッとしたナキとアリスは慌て始めた。
「ちょっ!ちょっとガウラ!」
「ん?なんだい?」
「なんだい?じゃないです!脱ごうとしないでください!!」
「肩を見せるぐらい、問題ないだろ?」
「わーわーっ!!!」
両手で視界を隠すアリス。
ナキがガウラの手を掴む。
「ダメだよガウラ!女の子が簡単に男の人の前で肌を見せちゃ!!」
「え?肩だよ?」
「ダメなものはダメ!そう言うのは、恋人じゃない人に見せちゃダメ!!」
「………わかったよ」
腑に落ちないという顔で、服から手を離すガウラ。
「アリスくん、もう大丈夫だよ」
「ほ、本当ですか?」
そーっと手を退けるアリス。
アリスの様子が面白かったのか、イタズラ心が顔を出したガウラは、再び服に手をかける。
「わーっ!!」
「ちょっと!ガウラ!」
「ははっ!アリスの反応は面白いな!」
「か、勘弁してください…」
そんなこんなで、賑やかに食事は進み、食事が終わる頃にナキから暁のリンクパールを貰い、ガウラはメネフィナイヤリングを貰っていた。
そして、ライディングの時間が迫っていると、ナキは帰って行った。
「さ、私はクガネに行こうかね」
「今からですか!?」
「なぁに、すぐに手に入るさ!」
ナキに頼まれたクガネ産の茶葉を取りに行こうとするガウラ。
「あ!待ってください!」
「なんだい?」
ガウラを引き止め、買ってきていたプレゼントを渡す。
「俺からのスターライトプレゼントです」
「へ?」
「ナキちゃんが来てると思わなかったので、渡すに渡せなくて」
「私は何も用意してないよ?」
「いいんです。日頃の感謝の気持ちでもありますから」
そう言ってアリスは、ヴァルにも渡して欲しいと、青い包みを渡した。
「義姉さんとお揃いなんで、喜んでくれるとは思うんですけど」
「わかった、渡しておくよ」
そう言って、ガウラはクガネへと去っていったのだった。
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