V.初めて知った誕生日


「そういえば、もうすぐガウラの誕生日だな。何か欲しいものはあるか?」

突然、そう尋ねたのは霊5月14日の夜。
尋ねられた本人は忘れていたと言わんばかりの顔をする。

「あー、そういえば、あと4日で誕生日か」
「自分の事だろう…、忘れてたのか」

少し呆れながら答えると、ガウラは苦笑いをした。

「で、欲しいものは?」
「うーん。すぐには思いつかないな…、そこまで欲しいって物もないし…」

ガウラはしばらく悩んでいたが、突然ハッとした表情になった。

「なにか思いついたか?」
「いや、そうじゃなくて…。そういえばヴァルの誕生日を知らないなって思ってさ」
「そういえば、話してなかったな」
「それで?ヴァルの誕生日はいつなんだい?」
「今日だ」
「今日!?」

思わぬ答えに声がひっくり返るガウラ。
しれっと答えたヴァルの様子に、思わず焦ってしまう。

「な、なんで言わないんだい!」
「今まで聞かれなかったし、自分から言うもんでもないだろ?」
「そ、そりゃ、そうだけどさ…」

溜め息を吐きながら軽く頭を抱えるガウラに、困ったように微笑むヴァル。

「もう夜だし、店も閉まってるし…、何もしてやれないじゃないか…」

呆れながら言うガウラに、ヴァルは口を開いた。

「オレはガウラと一緒に過ごせるだけで充分に嬉しい」
「それじゃいつもと変わらないだろ?それに、私だけ何かしてもらうのは性にあわない」
「まぁ、そうだろうな」
「何かないのかい?して欲しいこととか」
「そうだな…」

ヴァルは少し考え、そして静かに言った。

「ガウラに甘えさせて欲しい」
「………へ?」

予想外だったのか豆鉄砲を食らった鳩のような表情になるガウラ。

「そ、そんな事でいいのかい?」
「あぁ。オレは誰かに甘えた事が無いからな」

その言葉を聞き、ガウラは少し考えた。
そして、大きく手を広げた。

「よし!ドンと来い!」

頬を紅くしながら凛々しい表情で言われ、ヴァルは小さく吹き出した。

「笑うな!結構恥ずかしいんだぞ!」
「すまない。あまりに威勢がいいものだからつい」

眉間に皺を寄せ頬を膨らませるガウラ。
ヴァルは小さく笑いながら、ガウラを抱きしめた。
それに合わせて、ガウラもヴァルの背中に手を回し抱きしめる。

「誕生日おめでとう」
「ありがとう、ガウラ」

その後、ガウラが思いつく“甘やかす“だったのか、ヴァルの頭を撫でたり、肩を寄せたりとスキンシップが多く見られた。
そして、その日の夜はガウラの提案で、久しぶりに同じベッドで眠りについたのだった。



とある冒険者の手記

FF14、二次創作小説 BL、NL、GL要素有 無断転載禁止

0コメント

  • 1000 / 1000