Another 白蝶草─告白─
アリスが冒険者になり、かなりの月日が過ぎた。
そんなアリスには1つ、悩みがあった。
それは恋をしていること。
その相手は、エオルゼアの英雄と言われるガウラ·リガンだ。
初めて出会った時に、その容姿に見蕩れ、その後冒険者になってから再会。
ちょくちょく依頼を手伝って貰ったりしているうちに彼女の実力に憧れ、プライベートで食事をしながら会話をして内面に惹かれていた。
そんな時、ふと思ったのだ。
彼女はいつ、自分の弱さや辛さを吐き出しているのだろうか?と。
英雄と言われるほどの強さを持っていても、1人の人間。
辛さや弱い部分が無いはずがない。
ましてや、人との争いの渦中では仲間の死に遭遇する事だってある。
だが、彼女が弱音を吐いた、泣いた等の話は聞いたことがなかったのだ。
そして、共に依頼をこなしてて気づいたことがある。
かなり無茶をすることがあるのだ。
アリス自身も無茶をしてガウラに怒られる事があるのだが、彼女はそれ以上に無茶をする。
そんな姿を見てきたアリスは、彼女が無茶をしなくてもよくなるように、必死に実力を磨いた。
いつしか、双剣から剣と盾に持ち変え、タンクとして彼女の前を進むようになった。
その頃から、“彼女を護りたい“、“彼女の心を支えたい“と思うようになっていた。
そんなアリスは今、ガウラの双子の弟ヘリオと共に、カーラインカフェでお茶をしていた。
ギルドの依頼を終えた時にバッタリ会い、せっかくだからと休憩がてらお茶に誘ったのだった。
「ヘリオさん。聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ?」
「ガウラさんって、好きな人とか恋人とかいるんですか?」
「好きな奴がいるかはわからんが、恋人は居ないはずだ。居たら俺が一緒に住んでない」
「なるほど…」
「てか、なぜそれを俺に聞くんだ?直接本人に聞けばいいだろう」
キッパリと言われ、アリスは溜め息を吐いた。
「それが出来れば苦労しないですよ…」
「?」
ヘリオは、アリスの様子に首を傾げる。
その日はそこで解散し、アリスは数日間モヤモヤしていた。
だが、気持ちを言わなければ伝わらないのだ。
アリスは腹を括った。
自分は男として見られていない。
冒険者仲間の1人でしかない。
でも、気持ちを伝えなければそれを払拭する機会すらないのだ。
ある日の夜、アリスはガウラに話があると呼び出した。
場所はラベンダーベッドの中にある広場。
落ち着かない様子で待っていると、ガウラが歩いてくるのが見え、アリスは大きく手を振った。
「ガウラさん!ここです!」
そう呼びかけると、ガウラも小さく手をあげて向かってきた。
「すみません、いきなり呼び出してしまって」
「いや、いいよ。それより、話ってなんだい?」
いきなり本題に入られ、息を飲む。
心臓が早鐘を打つ。
でも、伝えるために来たんだと自分を奮い立たせた。
「あのっ、俺っ、ガウラさんのこと、1人の女性として大好きですっ!!」
「………………………は?」
予想だにしなかった告白に、ガウラは唖然としていた。
その反応はアリスには想定内、構わず話を続けた。
「俺、全然頼りないし、男として見てもらうにはまだまだだし、すぐに恋人になってくださいとは言いません!でも、これからもっと努力して、強くなります!だから、俺の事見てて欲しいです!」
顔を真っ赤にしながら、真っ直ぐにガウラの顔を見て言った。
彼女はポカーンとしたまま、答えた。
「えっと…、うん、まぁ、頑張ってくれ…?」
「はい!だから、覚悟しててくださいね!」
ガウラは頭の回転が追い付かないようで、「あ?あぁ…」と生返事状態だった。
だが、アリスにはその様子を気に求めなかった。
気にしてしまえば、その反応に勢いを無くしてしまいそうだったから。
「俺の話はそれだけです!夜分にすみませんでした!」
「…あぁ」
「ガウラさん、気をつけて帰ってくださいね!それじゃ!」
そう言って、アリスは走ってその場を去った。
それを呆然としたまま見送り、アリスの姿が見えなくなったところで、ハッと我に返った。
「…え?……今の……は?」
アリスの言葉を頭の中で再生する。
そして、思考が戻ってきた途端に顔が熱を持った。
「嘘…だろ?告白?!」
自分が告白されたと言う事実に驚き、ガウラは暫くその場を動けなかったのだった。
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