Another 第八霊災


ギムリトダークで、エオルゼア連合軍と帝国軍の激しい戦闘が繰り広げられていた。
英雄の到着に兵の士気は上がり、帝国軍の勢いを殺し、戦況は連合軍が優勢。
その中に、不滅隊員に扮したヴァルの姿があった。
戦場で英雄ガウラの姿を見つけ、さりげなく近くで戦い、彼女の死角から襲ってくる帝国兵を始末していた。
そして、勝利目前という時に、伝令が届いた。

「帝国軍が放った兵器にて、前衛が壊滅しました!」

思わず耳を疑う。
しかも、その兵器が投下されてから、次々に人が倒れていっていると言うことだった。
ヴァルは前衛がいた方向を見ると、光のエーテルのモヤが徐々に迫ってきているのが分かった。
光のエーテルは停滞の力を持つ。
これに飲まれれば即死する。
それを判断した瞬間、近くにいたガウラの腕を掴み駆け出していた。

「お、おいっ!突然なんだ!?離せ!」
「あの兵器はヤバイ!食らったら即死だ!」
「えっ?!」

ヴァルは演技をする余裕もなく、素でガウラに言い放つ。

「あれは光のエーテルを使った兵器だ!ゆっくりではあるが、こちらに迫ってきている!」
「待て!他の連中を置いては行けないっ!!」
「バカを言うな!残ったところで何も出来ない!無駄死にをするだけだっ!!」

切羽詰まった物言いに、ガウラは相手の言うことが嘘ではないと直感した。

「お前に死なれたら、あたいは何の為に生きてきたか分からない!お前はあたいの希望なんだ!!」

その言葉に、ガウラは違和感を感じた。
エオルゼアの英雄、光の戦士と言われてきた自分に、“エオルゼアの希望“ではなく、個人の希望と言われたのが不思議だった。
いったい、この不滅隊員は何者なのか。
だが、自分を必死に逃がそうとしている姿に何故か抵抗する気も起きず、手を引かれるまま走った。
そして、どのぐらい戦場を走り続けただろうか?
どんなに鍛えられた人間でも体力の限界は来る。
2人は足をもつれさせ、地面に転がった。
体を起こす体力も底を尽きた。
それでも、迫り来る脅威は未だに消えていない。
ヴァルは、息を切らせながらガウラに言った。

「まだ、動けるか?動けるなら、お前だけでも逃げてくれ」

ヴァルの言葉に、ガウラもまた、息を切らせながら言った。

「無理だ。さすがに私も限界だ」

それを聞いて、ヴァルは悔しさを隠せなかった。
ガウラはそんなヴァルを見て、疑問を口にした。

「なぁ、お前は何者だい?」

少しの沈黙。
どうせ、体力の回復は間に合わない。
それなら、全て話してしまおうと決めた。

「あたいは、お前が赤子の時から知っている。そして、お前を護る使命を持つ者だ」
「そうだったのか。じゃあ、今まで時々感じてた視線は、お前のものだったんだね」

納得したように答えるガウラ。
彼女も、この状況で助からないと分かっているようだった。

「護りきることが出来なくて、すまない…」
「いや、私の方こそ知らなかったとはいえ、巻き込んでしまって悪かった」

ガウラはそう言うと、ヴァルの方に顔を向けた。
その顔は穏やかだ。

「なぁ。名前を教えてくれないか?」

真っ直ぐ向けられた視線。
今まで望んでいても叶わなかった事が、こんな状況で叶うとは、なんて皮肉だろうか。
ヴァルも、ガウラを真っ直ぐ見つめて答えた。

「ヴァル。ヴァル·ブラック」
「そうか、ヴァルか…」

すると、ガウラはヴァルの手を握った。
突然のことにヴァルは驚いた。

「ヴァル。今まで護ってくれて、ありがとう」
「っ!?」

優しい笑顔でそう言われ、ヴァルは様々な感情が溢れ出そうになる。

「あたいも、ガウラには感謝してる」

そう、答えた瞬間だった。
光のエーテルが2人を飲み込んだ。
ヴァルは薄れゆく意識の中、最期の瞬間をガウラと共に居れた幸せを感じながら、永遠の眠りについたのだった。



とある冒険者の手記

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