V.猫化騒動

連日GC任務をこなしていたヴァル。

任務を終え、着替えをしているところでトームストーンに通知が来ていることに気が付いた。

ヴァルのトームストーンに連絡を寄越す人物は限られているため、嫌な予感がして通知を確認する。

発信者はヘリオだった。

そのチャットの内容を見たヴァルは、目を見開き、素早く着替えをし、不滅隊の屯所を飛び出したのだった。



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ラベンダーベッドのガウラ宅に到着したヴァルは、ズカズカと早歩きで玄関に向かい、その勢いのまま乱暴に扉を開けた。


「な、なんだ!?」


音に驚いたアリスの声が聞こえたが、構わずそのままの歩調で家の中に入る。

リビングにいたアリスとヘリオが一斉にヴァルを見る。


「ガウラが猫になっただって…?」


そう、ヴァルのトームストーンに来ていた内容はガウラが猫になってしまったという内容だった。


「俺のせいじゃない!」

「やったのは第一世界の夢の園の妖精達がだ、1日を目処に時間経過で治るはずと妖精王から聞いている。

姉さんなら…そこだ」


そう言ってヘリオが指さした方を見ると、高い所から少し長めのふわふわの白い毛の猫が顔を出した。

それを見て、眉間に皺を寄せるヴァル。

エーテル視をすると、間違いなくガウラのエーテルが視えた。

普段であればエーテルの香で判断するが、今は近くにヘリオがいる為、判断がつかなかったのだ。


「………」

「…なぁぅ」


ガウラが一鳴きしたのを聞き、溜息を吐いた。

全く、今回は自分がついていけない第一世界で起こった事とはいえ、厄介ごとに巻き込まれる彼女の体質に心の中で頭を抱える。

ヴァルは家の倉庫へ向かい、脚立を出して、ガウラのいる場所に脚立を設置した。

脚立を登りガウラの前までくると、ヴァルはなるべくが彼女を驚かせないように小さな声で「…おいで」と言い、最新の注意を払いながら手を伸ばす。

ガウラは抵抗することなく、ヴァルに抱きかかえられた。


「それじゃ、あたいはこの子を預かる」

「え?あ、ちょ」

「まぁその方がいいだろう、助かる」

「……ふんっ」


ガウラを抱えたまま脚立を降り、そのまま二階へ向かって歩き出した。

すると、後ろの方で「もっともふもふしたかったぁ〜!!」という、アリスの声が聞こえた。


あいつ、ガウラをもふもふしてたのか…



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ガウラの部屋に直行したヴァルは、ベッドにガウラを降ろすと、身軽な服に着替える。

そして、そのままベッドに横になると、腕にもたれるようにしてガウラは丸くなった。

今までの人生で小さな動物と接する機会が少なく、職業柄か小動物には警戒されることが多かったヴァルには、このガウラの行動に少し困惑気味に笑った。


「…あまり、動物は……しかも犬や猫のような小さい生き物は慣れてないんだがな…」

「ゴロゴロ…」


気持ちよさそうに喉を鳴らすガウラ。

腕から伝わるガウラの温もりがヴァルに心地よさを感じさせ、頬の筋肉が緩み、目を細める。


「……温かいな」

「にゃっ」


すると、ガウラが欠伸をした。

それにつられて、ヴァルも欠伸をすると自然と瞼が重くなり、意識は微睡へと落ちていった。



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腕に重みを感じ、ヴァルが目を覚ました。

目を開けると、そこには元の姿に戻ったガウラの姿。

無事に元に戻って良かったと安堵する。

ガウラを起こさないように腕を抜き、体を起こす。

時計を見ると時刻は夜中の2時頃を示していた。

それを見たヴァルは、自分がこんな時間までぐっすり寝てしまった事に驚きを隠せなかった。

ましてや、自分がベッドに横になった時は、家にアリスとヘリオがいた。

その状態で熟睡してしまった事がありえなかった。

そういえば、二人はどうしたのかと思い、そっと部屋を出て一階に向かうと、二人の姿はなかった。

その代わり、ダイニングのテーブルに置き手紙と食事が置かれていた。

どうやら、手紙の内容を見るに、二人は食事を用意して帰宅したようだった。


「あいつらが帰宅したのにも気づかなかったとは…」


自分が連日のGC任務で疲労が蓄積していたせいなのか、はたまた猫になったガウラの体温が心地よすぎたのか、それともガウラのエーテルの甘い香りのせいだったのか…

思いつく原因が多すぎて、特定は出来なかったが、自分の気が緩んだのは確かだった。

己の失態ともいえる状況に、ヴァルは片手で頭を抱え、大きな溜息を吐いた。

その後、一時間後にガウラが起床した。

ぐっすり寝ていたことを「不覚だった」と零すヴァルに、ガウラは「家にいる時くらいはイイと思うぞ…?」と返した。

状況を説明し、食事をする為に二人で一階に移動した。

ガウラもテーブルの上の置き手紙と食事を確認すると、背伸びをした。

すると、ガウラが口を開いた。


「今度、フェオちゃんにお礼言っとかなきゃな」

「?」

「妖精達を束ねている今の妖精王さ、どうせ今回も上手く立ち回ってくれたんだろう。

じゃなければ、私は今頃あの子達のおもちゃにされてただろうさ」


ガウラの言葉に、ヴァルの顔が引きつった。


「……第一世界はあたいは行けない場所だから、あまりそういう事故は起こさないでおくれ」

「はは、気をつけるさ」


苦笑しながら答えるガウラ。

今回は無事に猫化騒動は解決したが、ヴァルの不安の種が増えたことには変わりなかった。


あたいも、第一世界に行けたらいいのに…


そう思わずにはいられなかった。







とある冒険者の手記

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