V.心の拠り所

トライヨラに来てから、ずっと滞在しているヴァル。

今は継承の儀も終わり、ガウラの用事は終わったが、根っからの冒険者である彼女に休息と言う言葉はなく、エレンヴィルと共に新たな大地へと冒険に行った。

何故、ヴァルがここに留まっているかと言うと、ガウラに何か会った時に直ぐに駆けつけられるようにする為だった。

待機している間、この国の料理や食材などを調べ、レパートリーを増やしていた。


そんなある日、トライヨラの上空に見たことの無い形の物体が現れた。

そして、そこから現れる見たことの無い格好をした人と思わしき者達。

変わった乗り物に乗ってトライヨラに上陸すると、人々を襲い始めた。


「なんだ、コイツらはっ!?」


突然のことに、一瞬動揺はしたが、武器を向けられれば反射的に武器を構え応戦を開始する。

武器を持たない国民は、悲鳴を上げて逃げ惑う。

その光景に、ヴァルはガウラの事が頭をよぎった。


他人の死にも心を痛める彼女が、これを見たらどう思うのか。


ヴァルは、少しでも彼女の心の痛みを少なくする為、他者の為に武器を振るった。

しばらくすると、突然敵は撤退を始めたが、上空には得体の知れない物体が留まっている。

とりあえず、そちらを警戒しつつ、怪我人の救護に行動を切り替えた。

白魔法を使い、救護に当たっていると、聞きなれた声に名前を呼ばれた。


「ヴァルっ!!」

「ガウラ、良かった無事で」

「お前こそ、大丈夫だったかい?」

「見ての通り、傷1つついてない」

「良かった」


ヴァルの無事な姿を見て、ホッと安心するも、周りの惨状を見て直ぐに表情が曇った。


「あたいも、少しでも多く救助しようと思ったんだが…」

「…全ての人を助けることは出来ない。それは分かってるよ。1人でも多く助けようとしてくれてありがとう」


不器用に笑顔を向けるガウラ。

その笑顔に、ヴァルの心は痛んだ。

今は人目もあり、強がっているのが分かるからこそ、胸が苦しくなった。

今すぐにでも抱きしめてやりたいが、状況的厳しい。


「それで、今は現状確認か?」

「あぁ、確認が終わったら、王の間で情報交換する予定だ」

「……なら、あたいも行こう」

「えっ?!」

「現場で戦った奴の情報も、少しは役に立つだろう」


人との関わりは、なるべく持たない。

それは今でも同じだが、今はガウラの傍にいてやりたかった。


「まだ、確認は終わってないんだろう?行くぞ」

「えっ、あぁ」


ガウラは慌ててヴァルの後を追う。

その後、アリゼーと合流し状況確認を終え、王の間へと向かった。



***********



王の間で情報交換が終わり外に出ると、ヴァルが口を開いた。


「急いでいるところ申し訳ないのだが、少しガウラを借りてもいいだろうか?」


その言葉に、何かを察したアリゼーが返事をした。


「わかったわ。私達はブライトプルーム・ポスト前で待ってるわ」

「すまない、恩に着る」


そう言ってヴァルはガウラを連れて、人気が少ない場所へやってくると、ガウラを抱きしめた。


「ぴゃっ?!」

「すまない、もっと早くこうしたかったんだが、人目もあって出来なかった」


ヴァルの言葉を聞いて、ガウラはヴァルが自分を心配していたことに気がついた。


「ヴァル…ありがとう、もう大丈夫」

「本当か?」

「うん」


その返答に体を離すと、ガウラは笑顔を向けた。

その表情は自然なものだった。


「もし、辛くなったらいつでも呼んでくれ」

「わかった」

「皆の所まで見送る」


そう言ってガウラの手を握る。


「皆から見えるところになったら離すから安心しろ」


優しく微笑むヴァル。

手の温もりを感じながら、ガウラはこれから始まる戦いに気持ちを引き締めたのだった。


とある冒険者の手記

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