A.紅蓮祭2019


冒険者になって、初めての紅蓮祭。
アスレチック場になったコスタで、小型の船を見つけ、そこでヘリオと一緒に花火を見た。
その後、ヘリオは用事があるということで別行動。
俺は時間を持て余し、ふらっとラベンダーベッドに足を向けた。

「おや、アリスじゃないか」

声をかけられ、そちらに顔を向けると、そこには義姉であるガウラさんがいた。

「こんばんは!ガウラさん」
「こんばんは。今日はヘリオと一緒じゃなかったのかい?」
「あー、さっきまで一緒でしたよ?なんか用事があるらしくて、コスタで解散したんです」
「なるほど」

そんな会話をしていると、どこからか花火が上がる音がする。

「どこの都市でも花火が上がってるんですね」
「見に行くかい?ラベンダーベッドからでも見える場所があるんだ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」

すると、ガウラさんは2人乗りチョコボを呼び出し、花火が見える所まで乗せていってくれた。

「ここの木の間から見えるんだよ。ほとんどの人はコスタに見に行ってしまうから、穴場ってやつかな」
「なるほどです」

花火を見ながら、コスタでヘリオと一緒にいた時間を思い出していた。

「アリス」
「はい?なんです?」
「お前、最近戦士を鍛え始めたんだって?」
「ヘリオから聞いたんですか?」
「まぁ、そんなところだ」

すると、ガウラさんはスキルの説明をしてくれた。

「でだ、戦士のスキルにホルムギャングってのがあるんだが、これは使うと8秒間HPが1より減らなくなる」
「ってことは、ピンチの時に使う感じですか?」
「まぁ、そうだね。ちなみに、これと似たようなスキルは他のタンクジョブ全部にある」
「全部に?」
「そう。ただ、内容が微妙に違ってるけどね。例えば…」

ガウラさんは少し考えてから答えた。

「アリスが見る機会が多いとしたら暗黒騎士か」
「そうなりますね」
「暗黒騎士だとリビングデッドってスキルなんだが、これはちょっと変わっててね。即死級のダメージを受けても10秒間ならHPは1残るんだが…」
「だが?」
「即死級のダメージをくらってHP1になると、ウォーキングデッドになってね。効果が切れる前に全回復してやらないと、切れた途端に床を舐めることになるのさ」
「なるほど…」

その説明に、俺は考え込んだ。

「……ってことは、あながち白魔をカンストさせたのは間違いじゃなかったのか…」
「ほう?」

ぼそっと口にしてしまった言葉に、ガウラさんは意味深な表情をして反応した。

「あ!いや!えっとですね!」

慌てる俺に、ガウラさんはクスクス笑う。
たぶん、俺の言葉の意味をガウラさんは理解したのだろう。
俺は恥ずかしくなった。

「微笑ましいねぇ」
「あ…えっと…」
「動悸はなんであれ、努力して得たものは無駄にはならないさ」
「そうですね」

すると、ガウラさんは俺の方に体を向けた。

「アリス、これからも弟をよろしく頼むよ」
「は、はいっ!もちろんです!」

俺の返事にガウラさんは満足した笑みを浮かべる。
その笑みがヘリオの笑みと重なる。
俺もつられて笑みを返した。
初めての紅蓮祭、双子の姉弟と過ごした時間。
その時間は、俺の決心をより強くさせたのだった。

とある冒険者の手記

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