A.守護天節祭2019


冒険者になって初めての守護天節祭。
開催都市のグリダニアは、
一体何処からこんなに人が湧いたんだってぐらいにごった返していた。
祭りに来ている人達は、何らかの仮装をして楽しそうだ。
街も飾り付けがされており、コウモリやらお化けやらかぼちゃやら……と、若干ホラーチックではあったがデフォルメ化してあったのでホラー嫌いな俺でもセーフな範囲。
そんな賑やかな街並みを眺めながら、俺はかなりソワソワしていた。

 「アリス!」

呼ばれて振り向くと、そこには待ち焦がれていた最愛の人の姿。

「ヘリオ!!」

嬉しさのあまり、思わず駆け寄った。

「遅くなって悪いな」
「俺も今来たところだから大丈夫!」

そう、初めてのイベントは愛方と一緒に参加したくて声をかけたのだ。

「そうだ、もう少ししたら姉さんも来るって」
「ガウラさんも来てくれるんだ!」
「あぁ、4人PT組まないと参加出来ないから、少しでも人数いた方がいいだろって」
「なるほど。やっぱりガウラさん頼りになるな!」
「アリスは守護天節祭は初めてだったか」
「うん。冒険者になる前にリムサで飾り付けされてるのを見たぐらいで、参加するのは初めてなんだ」

そう言って笑顔を向けると、「そうか」と微笑んで答えるヘリオ。
俺、この微笑みに弱いんだよなぁ。
ヘリオの微笑みにドキドキしてると、「おーい!」と手を振りながらガウラさんが到着した。

「ガウラさん!お久しぶりです!」
「よっ!元気だったかい?」
「はい!ガウラさん忙しいのに、来てくれてありがとうございます!」
「気にすんな!初日に参加はしたんだけどね、まだ欲しい報酬があるからついでにね」
「じゃあ、チャチャッと終わらせよう!!」
とガウラさんの声で、俺達はPTを組んでイベントの参加申請をした。


**********


「………あの……ここって………」

イベント会場の建物内に飛ばされ、俺は固まった。

「ハウケタだよ」

その言葉に、俺の身体中を悪寒が走り抜ける。

「あ、そう言えばアンタ、こう言うのダメだったな。大丈夫か??」
「あ……」

ヘリオの言葉に、思い出した様に声を上げるガウラさん。
いや、他の冒険者さんもいるから怖がってる場合じゃない!!

「だ、大丈夫!!たぶん!!」
「無理するなよ?」

そう言って、ヘリオは優しく背中を叩く。
ヘリオにかっこ悪いところ見せられない!
そう心に言い聞かせて、ミッションをクリアする為、スタートと同時に一斉に走り出す。
所々に徘徊しているホラー感満載のモンスターに見つからないように、屋敷内を散策する。
俺は地下に向かい、いくつもある牢屋を散策する。
その間に探し物を見つけたという通知がトームストーンに入る。
あと牢屋は1つという所で、俺はうっかり周りを確認せずに通路に出てしまった。
視界に飛び込んで来たのは、大きな1つ目の魔物、アーリマンだった。


*********


一方その頃、地下入口近くの大広間で合流したヘリオとガウラは情報を交換していた。

「2階は何も無かったよ」
「1階もあらかた散策終わったから、残りは地下だな」

そう言って2人が地下に向かおうとした瞬間。

「ぎゃぁぁあああああああああああああああっ!!!!」

突如聞こえた悲鳴に、同時にビクッ!!と身体を震わせた。

「今のは……」
「アリスだな……地下にいるみたいだな」

顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる2人。

「モンスターに見つかってカボチャにされたな」
「分かりやすい奴だな」

そう言って、残りの探し物を見つけるために、地下へと駆け出して行った。


*********


「こ……怖かったぁ……」

全てのミッションを終え、グリダニアに戻ってきた瞬間、俺はその場にへたり込んだ。

「大丈夫かい?」
「はははっ……恥ずかしながら、腰が抜けた見たいです……」

心配そうに声をかけるガウラさんに、俺は苦笑いをしながら答えた。
うわ~、俺、かっこ悪っ……
すると、目の前に手を差し伸べられた。
手を辿って視界を上に上げると、それはヘリオの手だった。

「ほら、掴まれ」
「ヘリオ…、ありがとう」

その手を掴むと、ヘリオは俺の腕を自分の肩に回し、腰をつかんで身体を支えてくれた。

「この様子じゃ、周回は無理そうだねぇ」
「はい、すみません……ガウラさん」
「気にすんな!ヘリオ、アリスを頼んだよ」
「あぁ」

俺はヘリオに支えられながら、その場を後にした。

「かっこ悪いところ見せちゃったなぁ…」

ボソッとそんな言葉が零れた。
すると、「そんな事ないんじゃないか?」と言う思いがけない言葉に、思わず顔をそちらに向けた。

「怖いモノに挑むってことは勇気があるって事だ。何もかっこ悪いことじゃないだろ。むしろ、カッコイイんじゃないか?」
「そ、そうかな……」
「あぁ、俺はカッコイイと思うぞ…」

そう言ったヘリオの顔が、赤面していくのが分かった。
あまり、こう言ったことを恥ずかしがって言葉にしないヘリオが、そう言ってくれたのが本当に嬉しかった。

「ありがとな、ヘリオ」

かっこ悪いところ見せちゃったけど、思いがけず貰った言葉のおかげで、俺にとってかけがえのない大事な思い出になったのだった。

とある冒険者の手記

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