A.一時の休息に


グリダニアにあるカーラインカフェ。 
普段は冒険者でそこそこ賑わっているこのカフェに、ミコッテ族の双子の姉弟が、休憩がてらやってきた。
だが、今日のカーラインカフェは様子が違った。
女性客、しかも冒険者ではない一般人が多い。
姉弟は不思議に思いながらも席を探していると「いらっしゃいませ!」と店員に声をかけられた。

「あれ?ヘリオにガウラさん?」

その店員は、姉弟の身内に当たる人物だった。

「アリス?お前、こんな所で何してるんだ?」

双子の姉のガウラが、疑問を投げかけた。
隣にいる弟のヘリオも、自分のパートナーがこんな所でエプロンをつけて接客をしてる姿に驚いた表情をしていた。

「いやぁ、実はたまーにここで手伝いをしてるんですよ」
「手伝いねぇ…」
「ほら、いつもここでウェイターしてるミコッテの女の子いるじゃないですか。その子が急病とかで休んだ時に、代わりに出てるんです」

2人は「なるほど」と言った表情をした。

「あ、食事しに来たんですよね?今、あっちの席片付けるんで待っててください!」
「わかった」

アリスは、席を素早く片付けて2人を案内した。

「ご注文がお決まりになりましたら、お声掛けください」

店員らしく、丁寧にお辞儀をした後、別の席から声をかけられたアリスは、素早く対応に向かう。
素早く丁寧な対応と、爽やかな笑顔に、思わず「天職だな」と2人同時に呟いた。

「アリスの奴、冒険者なんてやってないで店で普通に働いた方が合ってるんじゃないか?」
「俺もそう思う。冒険者になったきっかけでもある、父親を探すってのも、既に達成してるらしいしな。なんでそのまま冒険者を続けてるんだろうな?」
「…お前…、それ本気で言ってるのかい?」
「?」

姉の言葉に、本気で分からないと言った顔をするヘリオ。
誰が見てもアリスの行動の源になってるのは、パートナーへの好意なのは明らかなのに、それに気づかない程、己に対する好意に疎い弟に、ガウラは少し呆れた顔をした。

「あんなに分かりやすいのにねぇ…」
「何がだ?」
「さあね。いつまでも座ってるだけなのは迷惑だ、飲み物でも頼むかね」

2人は、コーヒーとミルクティーを注文し、この後の予定を話していると、近くに座っている女性達の会話が聞こえてきた。

「ねぇ、今日の店員さん。カッコイイよね~」
「そうなのよ!でも、たまにしか居ないのよねぇ」
「え、そうなの?」
「月に2日居ればいい方よ?」
「臨時の人なのかなぁ?」

キャピキャピした話し方が、聞くつもりがなくても耳につく。

「爽やかな笑顔が素敵よねぇ」
「わかるぅ~!後で声掛けて見ようかなぁ?」
「ちょっと!あの店員さんの手をよく見なよ!既婚者だよ?」
「えーっ!やっぱ、イイ男はもうお手付きよねぇ」
「そうよねぇ、あの店員さん優しそうだし、お相手が羨ましいわ~」
「ね!あんな人に愛されるなんて幸せよね~」

そんな言葉を聞いて、ガウラはヘリオを見る。

「…だってさ」
「なにが?」
「会話、聞こえてるだろう?」
「あぁ」
「で?実際どうなのさ?」
「さぁな?」

そんな会話をしていると、「お待たせしました!」と、注文した飲み物が運ばれてきた。

「あとこれ、俺の奢りです!」

そう言われて出されたのは、2人分のアップルパイ。

「アップルパイ!いいのかい?」
「はい!いつもお世話になってますから!」
「そうかい?なら、遠慮なく戴くよ!」

思いがけず出てきた好物を、嬉しそうに頬張るガウラ。

「そうだ!ヘリオ、今日は家に戻ってこれるのか?」
「ん、遅くはなるだろうが戻るぞ?」
「晩飯は?」
「家で食べる」
「わかった!じゃあ、作っておくよ!」

アリスは要件を終え、次のテーブルへと移動する。
2人の会話に、ガウラの口元が綻んだ。

「…姉さん、なにニヤニヤしてるんだ?」
「いや?仲が良いなと思ってね」
「……」

少し罰が悪そうにそっぽを向いた弟の頬は、少し赤みを帯びているのを、ガウラは見逃さなかった。

微笑ましいねぇ

身内の仲良のさを、嬉しく思いながら、アップルパイを頬張るのであった。


とある冒険者の手記

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