A.ヒーラーとして


その日、アリスはリリンに戦闘経験を積ませるために、義姉であるガウラと3人でIDに来ていた。
人が怪我をするのを極度に恐れるリリンは、冒険をする間に少しは耐性がついたようだが、それが身内相手だとまだまだ動揺をしやすい事があった為、荒療治と称してアリスとガウラがIDに連れ出したのだった。
タンクはアリス。ナイトをカンストさせ、緊急事態にも対応できるようにした。
道中は何事も問題なく進み、時折ガウラからはアドバイス、アリスからは褒める言葉を貰い、リリンは少しずつ自信をつけて行った。
だが、ID最後のボス戦でそれは起こった。
ボスの全体攻撃の後、メディカラをかけようと詠唱をしているリリンに、ボスがターゲットをし、強攻撃をしようとしていた。

「リリンちゃん!危ないっ!!」

その声にハッとしたリリンの目の前にアリスの背中。

「ぐはっ!!」
「アリスお兄ちゃん!?」

ナイトの庇うを発動させたアリスは、腹からボタボタと血を流し、片膝を地に着けた。

「アリス!!」

突然のことにガウラも声を上げる。
アリスは息を荒くしながら、リリンに言葉をかける。

「リリン…ちゃん…回復をっ…」

一向に回復が来ないことに、アリスはリリンが動揺していることに気がついた。

「あ……いや……いやぁ……っ!!」
「リリン…ちゃん……っ」

アリスの声は届かない。
このままでは魔力の暴走が起こる!
アリスは怪我の痛みを堪え、ガウラの元へと駆け出す。

「いやぁぁぁぁああああああっ!!!」

リリンの叫びとともに、膨大な魔力が暴走する。
間一髪、アリスはガウラを背にパッセージ·オブ·アームズを展開。
直に魔力の暴走を食らったボスは消し炭になる。

「ぐぅっ!!」

気力を振り絞りながら魔力に耐えるアリス。
このままでは危ないと判断したガウラが叫ぶ。

「リリン!しっかりしろ!お前が回復をかけないと、本当にアリスが死んでしまうぞっ!!お前は白魔道士だろっ!!」

そのガウラの言葉に、弾かれたようにリリンは正気を取り戻し、魔力の暴走が収まる。
その直後にパッセージ·オブ·アームズの効果が切れ、アリスはそのまま倒れ込む。

「!?お兄ちゃんっ!!」
「リリン!落ち着け!アリスにレイズを」

リリンは震える手で幻具をかざし、レイズを唱えた。
アリスの体を光が包む。
傷が塞がり、顔色が良くなっていく。
そして、リリンはすかさずアリスにベネディクションをかけた。
完全回復したアリスは、目を覚ます。

「お兄ちゃんっ!!良かった…良かったぁ…っ」

わんわん泣くリリンの頭をぽんぽんするアリス。

「助けてくれてありがとな、リリンちゃん」
「全く、ナイトは回復スキルを持ってるのに何やってんだか…」
「いやいや、あの状況でそこまで判断出来ないですよ」

ガウラの言葉に苦笑いをするアリス。

「後でアリスは説教な」
「うっ……はい……分かりました……」

アリスは耳をシュンと下げた。
そして3人は、リリンが落ち着いてからIDを出た。

「リリン」
「なぁに?」
「ヒーラーはどんな時でも取り乱したらダメだ。じゃないと、救えるものも救えなくなる」
「うん!私、しっかりする!みんなを救える、立派なヒーラーになるっ!」
「よし!その意気だ!」

笑い合うリリンとガウラ。
そのまま、ガウラの家へと向かった。
そして、別室でアリスは毎度の事ながらガウラから説教を喰らったのだった。



とある冒険者の手記

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