A.エターナルバンド·アニバーサリー


窓から差し込む朝日で目が覚める。

「もう朝か…」

上半身を起こし、大きく伸びをする。
時間を確認するためにトームストーンを手に取ると、何かのお知らせ通知が届いていた。
なんだろうと通知を開くと、[エターナルバンド·アニバーサリー]の文字。

「そうだ、今日で1年になるんだ」

まだ、隣で寝息をたてているヘリオを見て、1年を振り返ってみる。
本当に1年で起こった出来事なのかと思うほど、色んなことがあった。
その分、もう何年も一緒にいるような、そんな錯覚さえ覚えるほどだった。
そして、何かがある度に相手への思いは、強く、深く、大きくなった。
本当に、本当に大事な人。
朝日で黄色のメッシュの入った白銀の髪が、キラキラと輝く。
その髪にそっと触れ、頭を撫でる。
それだけで愛しい気持ちで胸がいっぱいになる。
そっとヘリオの頬にキスをし、起こさないようにベッドから抜け出し、着替え、朝食の準備をするためにキッチンへと向かう。
ウィンナーをボイルするために、鍋に水を張り火にかける。
湯を沸かしている間に、サラダの用意し、棚から朝食用のパンを取り出しバスケットに入れ、沸いた湯にウィンナーを投入した。

「おはよう、アリス」

突然の声に振り向けば、軽く欠伸をしているヘリオの姿があった。

「おはようヘリオ!あ、起きたところ悪いんだけどさ、目玉焼き焼いてくれないか?」
「ん、いいぞ」
「ありがとう!あと、ウィンナーの茹で具合の確認も頼むよ」
「あぁ、分かった」

キッチンをヘリオに任せ、用意をしたサラダとパンを食卓に並べる。
チーズを出すのを忘れたのを思い出し、チーズの棚へと向かう。

「アリス」
「ん?なんだ?ヘリ……」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
目の前にはヘリオの顔が近くにあり、俺の唇には柔らかい感触。
キスをされていると気がついた時には、ヘリオは少し離れそっぽを向いていた。

「え……あ……?」
「今日、記念日…だろ?そんな日ぐらいは、こんなのもいいだろ……」

後ろから少し見える頬が赤く染まっていた。
やっと状況を理解した俺は、両手で顔を覆い、しゃがみ込んだ。

「おおおおおおおおっ!!」
「なっ!何だ?!いきなり叫び出して!!」
「だ、だって!ヘリオからしてくれるなんてっ!嬉しいやら、照れくさいやらでっ!俺、今この瞬間に死んでもいいぐらい幸せだっ」
「お、大袈裟すぎるだろ…」

呆れたヘリオの声。
俺が嬉しさのあまりに動けなくなっていると、階段を登ってくる音が聞こえた。

「おはよー!ヘリオお兄ちゃん!アリスお兄ちゃん!」
「リリン、おはよう」
「…おはよー、リリンちゃん」
「アリスお兄ちゃん、どうしたの?具合悪いの?大丈夫?」
「…大丈夫、嬉しさのあまりに魅了のデバフがついただけだから…」
「?」

キョトンとするリリンちゃん。

「ヘリオお兄ちゃんも、お顔が赤いよ?お熱あるの?」
「いや、大丈夫だ。熱は無い」

さすがにこれ以上、リリンちゃんを困惑させる訳にはいかないと思い、俺は何とか立ち上がった。

「心配してくれてありがとな」
「ううん、どういたしまして!」

ニッコリ笑うリリンちゃん。
そして、俺はヘリオに向き直る。

「ヘリオ、時間がある時にエタバンアニバーサリーの日付の予約しに行こうぜ!」
「あぁ、明日なら空いてるぞ」
「じゃあ、明日行こう!」
「エタバン?アニバーサリー?」

首を傾げるリリンちゃんに、俺は答えた。

「あー、リリンちゃんにはまだ教えてなかったな。エタバンってのは、永遠の絆を誓い合う儀式って言ったらいいのかな?アニバーサリーは記念日。今日は俺とヘリオが永遠の絆を誓い合った記念日なんだ」
「そうなんだ!その儀式は、他の人も見に行けるの?」
「うん、見に行けるよ!」
「私も行きたい!」
「わかった!じゃあ、後で招待状を渡すから、無くさないようにするんだぞ?それが無いと見に行けなくなるからな」
「うん!わかった!」

嬉しそうに答えるリリンちゃん。
ヘリオは照れくさそうに頭を掻く。
初めてのエタバンの時は2人きりだったから、今回はFCメンバーやフレンドさんを呼ぶのもいいかもな。
あとで、2人で相談しよう。

「ほら、ウィンナーと目玉焼き出来たぞ」
「サンキュー!じゃあ、朝御飯にしよう!」
「わーい!」

俺たちは朝食を取りながら、今日の予定と、明日の予定について話し合う。

この穏やかな日々が途切れることのないよう、もっと強くなろうと改めて思う。
大事な人と、ずっと一緒に居られるように───





とある冒険者の手記

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