A.サングラス
「アリス、準備出来たか?」
愛方のヘリオに声をかけられ、「今行く!」と返事をする。
義姉のガウラさん宅に遊びに行ったリリンちゃんを迎えに行く為、俺は外で待つヘリオの元へ向かう。
「うわっ!眩しいな」
家を出ると、強烈な西日が目を眩ませる。
俺は、この前買った真新しいサングラスを掛け、レガリアを運転するべく乗り込んだ。
助手席に乗るヘリオ。
「サングラス掛けてるの、初めて見るな」
「あぁ、この前買ったばかりなんだ!」
「…またか、あんた最近本当に無駄遣いが多いぞ?」
「でも、カッコイイだろ?」
「……」
ヘリオは完全に呆れた顔をした。
「似合ってないか?」
「そういう問題じゃない」
「ちぇっ」
俺はちょっと拗ね、レガリアを走らせる。
黒衣森の中央森林地帯から、レガリアを降り、小舟に乗ってラベンダーベッドへ。
都市内エーテライトを使い、ガウラさんの家へと到着した。
玄関のドアをノックし、中に入る。
「お邪魔します!」
「お、いらっしゃい!…って、また随分チャラいと言うか、イカつい格好してるねえ」
「え?そうですか?」
女性と男性の感性の違いか、はたまた俺のセンスがないだけなのか分からない。
「リリンを迎えに来たんだろ?」
「はい!」
「ちょっと待ってな」
ガウラさんが「リリーン!迎えが来たぞー!」と大声で呼ぶと、「はーい!」と言う声と共に2階から姿を表すリリンちゃん。
「ヘリオお兄ちゃーん!アリスお兄………」
俺を見てリリンちゃんの動きが止まる。
「リリンちゃん?」
俺が声をかけると、リリンちゃんはビクッと体を震わせ、素早くガウラさんの後ろへ隠れた。
「…ガウラお姉ちゃん…」
「おいアリス!リリンが怯えてるじゃねーかっ!サングラス取れ!」
「えーっ!?ちょっ、リリンちゃん?!俺だよ!アリスだよ!」
必死にリリンちゃんに訴えかけるが、ガウラさんにしがみついたまま、後ろから出てこようとしない。
かなりショックを受けていると、ヘリオに肩をポンと叩かれた。
「やめとけ」
苦笑いをしながら、ヘリオは俺のサングラスを取り、自分にかける。
うわっ!ヘリオが俺のサングラス掛けてる!?
自分の物を、最愛の人が身に付けるのを見て、俺はなんだか照れくさくなった。
だが、次の瞬間
「ヘリオお兄ちゃんカッコイイ!」
「えーーーーっ!?」
リリンちゃんの反応に、俺は驚愕の声を上げる。
それを見て、大爆笑するガウラさん。
「ヘリオお兄ちゃん、似合うね!」
「そうか?ありがとな」
和気あいあいとしているヘリオとリリンちゃん。
いや、確かにカッコイイ…
カッコイイけどっ、この扱いの差はなんだっ!?
賑やかな3人を後目に、俺は打ちひしがれた。
その後、俺はリリンちゃんの前でサングラスをするのを禁止されたのだった。
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