A.大事なスキンシップ?
リムサ・ロミンサの海豚亭。
今日は自宅にヘリオもリリンちゃんも帰って来れないと聞いて、フラっと足が向いた。
冒険者になる前は、ここでよく飲んで居たが、今は自宅でしか飲まないので、久しぶりに飲みに来たのだった。
空いている席を探していると、突然声をかけられた。
「あ!アリちゃんじゃん!」
そこに居たのは、フレンドのリンちゃんだった。
「リンちゃん!久しぶりだね」
「ほんと、久しぶりだね!ここに居るってことは、アリちゃん飲みに来たんっしょ?」
「まぁね…って、リンちゃん、君、未成年だよね?」
リンちゃんの手には麦酒の入ったジョッキが握られていた。
「そんな堅いこと言ってないで、一緒に飲もうよ!」
「しょーがないなぁ、じゃあ、2~3杯だけな」
「やっりぃ!」
リンちゃんと同席させてもらい、麦酒を頼むと直ぐに麦酒が運ばれてきた。
「久しぶりの再会にカンパーイ♪」
「乾杯!」
久しぶりに飲むリムサの麦酒は、やはり美味かった。
「ぷはっ!やっぱ、リムサは麦酒だよな!」
「アリちゃん、イイ飲みっぷりじゃん♪」
楽しそうなリンちゃんにつられて、俺も何だか楽しくなってきた。
「やっぱ、誰かと飲むのは良いな」
「なに?アリちゃん、いつも1人飲みなの?」
「うん。1度お酒で失敗しちゃってね。それからは自宅で1人で飲んでるよ」
「アリちゃん、お酒弱いんだ?」
「いや、自分で言うのもなんだけど、かなり強い方だよ。失敗した時はさ、クイックサンドで飲んでたら、次々にフレンドが集まってきて、どれだけ飲めるか大会が始まって、その時に許容量オーバーして記憶飛んだんだ」
「へー、そーなんだ」
麦酒をまた1口飲み、リンちゃんは一瞬考える素振りをした。
「ねぇ、アリちゃんってヘリちゃんと一緒に住んでんだよね?ヘリちゃんは飲まないの?」
リンちゃんの言葉に、俺はハッとした。
「そーいえば、ヘリオが飲んでるところ、見たことないな…」
「今度誘ってみたらいーじゃん!」
「んー、そうだな。今度誘ってみるか!」
明日はヘリオは帰ってくると言っていたから、誘ってみよう。
「ところでさ、アリちゃん」
「ん?なに?」
「アリちゃんって、ヘリちゃんとどこまで行ってるの?」
「どこまでって…、何が?」
「もー、察しが悪いなぁ。アリちゃん達の関係だよ!2人はエタバンしてんでしょ?夜とかどうなの?」
「ぶはっ!!!げほっ!ごほっ!」
「うわっ!きったなっ!」
とんでもない質問に思わず飲みかけていた麦酒を思いっきり吹き出しむせた。
「なっ!なっ!!何を言い出すんだよ!」
「だってぇ、気になるじゃ~ん?」
ニヤニヤしながら「で?どうなのよ」と聞くリンちゃんに、俺はため息を吐きながら答えた。
「別にご期待に添えるような事は何も無いぞ。どこまで行ってるかって質問に答えるなら…キスまでしかしてないし…」
答えていてだんだん恥ずかしくなり、語尾が小さくなる。
すると、その答えが不満だと言うような表情をされた。
「えー、最後まで行ってないのー?」
「さ、最後までって…、俺等、男同士なんだけど…」
「何言ってんの?男同士とか関係なくね?」
「う、う~ん。俺は今のままで満足してるしなぁ。相手がそこまで求めてるなら嬉しいけど、ヘリオ自体が恥ずかしがり屋な所あるし、今以上の関係は求めてないと思うんだよ」
「ヘリちゃんには聞いてみたの?」
「いや?聞こうと思ったことないし、聞く機会も無かったし…。でも、相手の反応見てれば、何となくわかるよ。エタバンして1年も経ってるしさ」
「ふ~ん…つまんないの~」
リンちゃんはそう言って麦酒を1口飲む。
「ま、当人達が満足なら他人の私がとやかく言う事じゃないけどさー。夜の営みも大事なスキンシップだと思うけどなぁ」
「ま、まぁ、そうなんだろうけどさ。それはやっぱ、お互いの気持ちも問題もあるだろ?」
「まーね」
お互いにグイッと麦酒を飲み干し、おかわりを注文する。
「てか、リンちゃんはどうなんだ?良い人とかいないのか?」
「いたらこんなとこで1人で飲んでないですー!あーぁ、どっかに良い男いないかなー!」
そんな、会話をしながら酒を酌み交わし、その後はリムサの宿に泊まった。
翌日、帰宅したヘリオにこの話をしたら、「考えたことも無い」と全力否定されたのは言うまでもなかった。
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