A.バルムンク


暗黒騎士を覚え始めてから、だいぶ動きに余裕が出てきた頃、アリスは庭の木人を叩いていた。
その後ろで、時折アドバイスをしながら眺めているヘリオ。
その時、嫌な音を立てて大剣が折れ、庭の地面に剣先が刺さった。

「げっ!折れた!?」

修理や手入れなどは、欠かさずしていた筈なのに、壊れた大剣に唖然とする。

「耐久もまだあった筈なのに…」
「どれ、見せてみろ」

そう言われ、折れた大剣の柄を渡す。
折れた断面を見て、ヘリオの表情が曇った。

「粗悪品だな。強度が無い」
「マジかよ…結構高かったのに…」

ヘリオの言葉を聞き、項垂れるアリス。

「表面だけじゃ見分けがつかないからな、仕方ないだろ」
「うん…、また武器新調しないといけないのか…」

落ち込んでいるアリスを見て、ヘリオは何かを思いついた様な表情を一瞬した。

「アリス、ちょっと待ってろ」
「え?う、うん…」

そう言って、ヘリオはどこかへテレポした。
10分ほどして帰ってきたヘリオが手に持っていたのは、2人が出会った頃にヘリオが使っていたバルムンクだった。

「これを使え」
「えっ!良いのか!?」
「今は使ってないからな、扱いやすいし、強度もしっかりしてるから折れることは無いだろ」
「ヘリオ…ありがとう!」

バルムンクを受け取り、まじまじと見る。
アリスに取って、かなり印象が強かった武器。
そして、ヘリオが使っていた物と言うこともあって、心が踊った。

「大切に使わせてもらうよ!」

笑顔でそう答え、また木人に向かう。
ヘリオの言う通り、とても扱いやすく、木人を叩くのに夢中になった。
その姿を後ろから見物するヘリオ。
バルムンクを受け取った時のアリスの心底嬉しそうな顔を思い出し、そんなに嬉しいもんか?と少し首を傾げていたのだった。



とある冒険者の手記

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