A.感情


「うぅ~………っ」

熱でうなされているアリス。
その様子を呆れた表情のまま、氷嚢を変えるヘリオ。

「あんた、熱を出すって分かってるのに、イシュガルドに行くなよ」

溜息を吐きながら言われ、耳をシュンと倒しながら、アリスはヘリオの方を見る。

「だって…、蒼天街の納品で調理師のレベル上げたかったんだ…」
「だからって、寒空の下で作業することないだろ!せめて宿の部屋でやれよ!」
「ゔ…ごめんなさい…」

正論を言われ、素直に謝るアリス。
だが、ヘリオの言葉は止まらない。

「で?熱が出てるのにも関わらず、今度はクリスタリウムに行ってコーヒークッキーの納品してたんだって?」
「…はい…ごめんなさい…」

謝ることしか出来ないアリスに、ヘリオは眉間に皺を寄せる。

「自分の体質の事は、自分自身がよーっく分かっているだろう?頼むから、もう少し自分を大切にしてくれ!」
「…はい…」

珍しく強い口調で言われて、アリスは返事しか出来なくなった。

「あんたの母親は身体が弱くて亡くなったんだろ?あんたも、そうならないとも限らないんだぞ?」
「……」

アリスにとって1番痛い言葉に、ついに何も言えなくなる。
だが、その痛い言葉はヘリオがどれだけ自分を心配しているかが伝わる言葉でもあった。

「あんた、俺の傍にずっといたいんだろ?だったら寿命を縮める様なことはするな」
「…うん…ごめん。心配かけて…」

その言葉を聞いて、ヘリオはリビングへ向かう為に背を向けた。

「俺の目の黒いうちは、俺より先に消えたら許さないからな」

ヘリオのその言葉はアリスの心に深く突き刺さった。
小さい声で「分かった」という言葉を聞いて、ヘリオはリビングへと向かった。
そして、リビングの椅子に座り一息ついた時に自分の失態に気がついた。

「消えたらってなんだ、死んだら、だろ」

だから感情的になるのは嫌だったんだと、頭を抱えた。
時計ウサギの1件で、ひょっとしたらアリスが自分の正体に気がついているかも知れない可能性があると分かっていたのに迂闊だったと後悔したのだった。



とある冒険者の手記

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