A.花嫁の保護者達



─お兄ちゃん達に大事なお話があるので、予定が空いている日を教えて欲しいです─

一人暮らしをしているリリンから、そんな手紙がアリスの家に届いた。
その日のうちにヘリオと予定を合わせ、リリンに返事の手紙を送った。
そして、予定の当日。
リリンと一緒にやってきたのはFCメンバーのアリス·シラユキ(愛称はアリシラ)。
同じFCメンバー、アカネ·シラユキの妹だった。
2人を笑顔で出迎え、お茶を出す。
2人と対面するように、アリスとヘリオは向かい側に座った。

「それでリリンちゃん、大事な話って?」
「あのね、えっとね…」

少し照れたように、体をモジモジさせながら、上目遣いでリリンは言った。

「私ね、アリシラちゃんとエタバンしますっ!」

その言葉に、アリスとヘリオを目を見開いて固まった。

「あのねっ、私、アリシラちゃんと一緒にいたいって、ずっと仲良くしたいって思ってね、だから」

一生懸命自分の言葉で気持ちを伝えるリリン。

「だから、お兄ちゃん達に、エタバンに来てもらいたいなって」
「…そっか」
アリスは優しく微笑んだ。
「リリンちゃん、おめでとう!」
「…いいの?エタバンしても…?」
「当たり前だろ?一緒にいたいって思える大事な人が出来たなら、俺は嬉しいし。全力でお祝いするよ!」

アリスの言葉にパァっと満面の笑顔になり、嬉しそうにアリシラと顔を見合わせるリリン。

「さあっ!今日は前祝いだ!ご馳走を作るから、2人とも食べて行ってくれよな!」

アリスは笑顔で言い、ヘリオを促し、お祝いの準備に取り掛かった。


************


リリンとアリシラが帰った後、プライベートスペースでワインを飲んでいたアリスに、ヘリオは声をかけた。

「意外だったな、あんたがあんなにアッサリ2人を認めるなんて」

ヘリオの言う通り、以前のアリスであれば、あんなに簡単に2人を認める事は出来なかっただろう。

「うん。下手な異性を連れてこられるより、アリシラちゃんが相手で良かったって思えたんだ」

アリスの隣に腰掛けるヘリオ。
アリスはワイングラスを見つめたまま、続けた。

「それにさ、好きな気持ちは止められない。せっかくリリンちゃんが自分のパートナーを見つけたのをお祝いしてあげないと、つらくなっちゃうからさ」

そう言って、ヘリオに少し寂しそうな笑顔を向けた。

「少しは子離れ出来たみたいだな」
「…でも、やっぱ、寂しいよ」

静かに1粒の涙が、アリスの瞳から零れた。
それを見て、呆れた表情になるヘリオ。

「…男が泣くな」
「だってぇ~」
「今生の別れじゃないんだ、しっかりしろ」

一気に泣き出すアリス。
仕方ないなと言うように、ヘリオはアリスの頭を軽く撫でた。


************


エタバン当日、会場前で待っているとリリンちゃんが所属しているFCのメンバーやフレンドさん達が集まってくる中、「アリスさん!ヘリオさん!」と声をかけてきた人物がいた。

「リリシアさん!お久しぶりです!」

リリンの実母、リリシア·カランコエ。
リリンのエタバンを聞いた後、アリスはリリンに許可を貰い、リリシアに参列をお願いしたのだった。

「わざわざ連絡をくださって、ありがとうございます」
「いえいえ、リリシアさんには是非参列して貰いたいと思っていたので、お忙しい中、来て頂けて嬉しいです」
「リリンがパートナーを決めたと聞いて、そんなに大人になったんだなと、アリスさん達には感謝してもしきれません」

頭を下げるリリシアに、アリスは「そんな!大したことはしてないので頭を上げてください」と慌てて言った。
そして、しばらくすると「よう!」と声をかけられ振り向くと、そこには義姉であるガウラの姿があった。

「ガウラさん!」
「姉さん」
「やっぱりお前達も呼ばれてたんだね」
「てことは、ガウラさんもリリンちゃんのエタバンに?」
「あぁ、リリンから直接招待状を渡されたよ」
「そうだったんですね!それにしても、ガウラさん、ドレスじゃなくてスーツなんですね?」

しっかりとした礼装ではあるが、パンツスーツを着ているガウラに、アリスは少し驚いた様に言った。

「ドレスでも良いんだけどね、ガラじゃない気がしてね。こっちの方が私的にはしっくりするんだよ」
「そうですか?ガウラさん、ドレス姿も似合うと思うのに…」
「似合う似合わないの問題じゃないんだよ。やっぱり自分らしいのが1番さ」
「ははっ、ガウラさんらしい」

そんな会話をしていると「アリスくん!ヘリオさん!」と声をかけられ振り向くと、そこにはアカネの姿があった。

「アカネさん!久しぶり!」
「久しぶり!やっぱり、2人共招待されてたんだ!」
「そりゃあ、一応リリンちゃんの家族だからね!」
「だよね!それにしても、仲が良いとは思ってたけど、まさかアリシラとリリンちゃんがパートナーになるなんて、驚いたよ!」

嬉しそうに話すアカネが、ガウラに気がついた。

「あ、もしかして話に割って入っちゃった?」
「いや、大丈夫!そうだ!アカネさんに紹介するよ!ヘリオの双子のお姉さんのガウラさん」
「ヘリオさんのお姉さん!初めまして!アカネ・シラユキと言います!アリスくんのFCに所属してます!」
「私はガウラ・リガンだ。よろしく」

言って、お互いにお辞儀をする。
皆、思い思いに語り合っていると、主役の2人が到着した。
大聖堂に入り、準備時間の間は待合室で待機、そしてアナウンスが入り式が始まった。
入場するリリンとアリシラ。
2人共とても綺麗で、この時点でアリスはリリンとの思い出が頭の中を駆け巡り、目頭が熱くなった。
式は順調に進み、撮影等ができる時間。
記念撮影をした後、皆思い思いに2人にお祝いの言葉をかける。

「アリスお兄ちゃん!ヘリオお兄ちゃん!」
「リリン、エタバンおめでとう」
「おめでとう、リリンちゃん!」
「ありがとう!」

笑顔で会話を交わす。
アリスはアリシラに向き直る。

「アリシラちゃんも、エタバンおめでとう!」
「ありがとうございます!アリスさん!そうだ!リリンちゃんがお2人に伝えたいことがあるって言ってたんですよ!」
「伝えたいこと?」

アリシラに言われて、アリスとヘリオはリリンを見る。

「アリスお兄ちゃん、ヘリオお兄ちゃん。私を外の世界に連れ出してくれてありがとう!色んなことを教えてくれて、家族になってくれてありがとう!リリンはこれからアリシラちゃんと幸せになるよ!だから、心配しないでね!」
「…リリンちゃん…」

リリンのその言葉に、アリスが堪えていた涙が溢れ出した。
ボロボロと涙を流すアリスにつられて、リリンの瞳も潤みだす。
泣き出したアリスを見て呆れた様にヘリオは口を開いた。

「泣くなよ、祝いの席で」
「だって、だってぇ…」

その様子を見たガウラも、呆れ気味に言った。

「アリス、お前が泣くからリリンまで泣きそうだろ。泣き止め」
「そ、そんな事言われても…っ」
「まったく、親バカにも程があるだろ」

そんなやり取りを見て、周りの参列者達から笑いが起こる。
その中で、1番後ろにいたリリシアは、密かに涙を流しながら、そのやり取りに微笑んでいたのだった。




とある冒険者の手記

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