A.ラブレターと信頼
カーラインカフェで、2日間の臨時のアルバイトを終え、「お疲れ様でした!」とスタッフルームを出たアリスの前に、数人の女性が現れた。
女性達は「良かったら読んでください!」と手紙をアリスに押し付け、一目散に去っていった。
受け取り拒否も出来ぬ素早さに呆気に取られながら、仕方なく手紙を鞄に入れ、テレポで帰宅をする。
テーブルに鞄をドサッと置き、夕飯の準備を始めた。
料理がもうすぐ完成しそうな時、「ただいま」とヘリオが帰宅してきた。
「ヘリオおかえり!」
すぐさまヘリオの元へ行き、抱きしめキスをする。
毎度の事なのに、頬を赤く染め溜め息を吐くヘリオ。
「もうすぐ夕飯出来るから!」
「…わかった」
その間に着替えてしまおうと、ヘリオが寝室へ向かう。
そこで、テーブルにある手紙に目が止まる。
「手紙?」
「え?」
ヘリオの言葉に、アリスが振り向く。
テーブルに出ている手紙を見て、「あー…」と、声を上げる。
「今日帰りに、女性数人から押し付けられたんだ。鞄置いた時に出ちゃったみたいだな」
「読まないのか?」
「え?読まないよ。だって、どうみたってラブレターだろ?後で捨てようと思ってたし」
「そうか」
それを聞いて、興味なさげに寝室へ向かうヘリオ。
アリスは手紙を全て纏め、ゴミ箱へ捨てた。
鞄を片付け、夕飯を並べ終えたタイミングで、部屋着に着替えたヘリオが戻ってきたので、夕飯を食べ始めた。
夕食後のまったりとした時間。
アリスはワインを飲み、ヘリオは書斎デスクで本を読んでいた。
ワインを飲み干し、ヘリオの後ろにあるベッドに腰かけるアリス。
ふと、さっきの手紙を見られた事を思い出した。
「なぁ、ヘリオ」
「ん?なんだ?」
本から視線を外さずに聞くヘリオ。
「俺がラブレターとか貰ってきたら、嫌な気分になる?」
アリスの質問に「別に」とヘリオは答える。
「ヘリオがヤキモチ妬かないのって、俺を信用してくれてるって事なのか?」
その言葉に、ヘリオは本を読むのを止め、少し考え込んだ。
「……かも、しれないな」
その返答を聞き、アリスはヘリオを後ろから抱きしめた。
「えへへ~♡」
「な、なんだ、いきなり…」
「俺の気持ち、ちゃんとヘリオに伝わってるんだなぁって思ったら嬉しくて」
心底嬉しそうなアリスに、少し照れくさくなるヘリオ。
すると、突然アリスに頬にキスをされた。
「なっ!?」
「ヘリオ、好き」
「俺は本を読んでるんだが?!」
「本はいつでも読めるだろ?」
「き、キスだって家に居ればいつでも出来るだろっ」
「今のこの気持ちは、今しか伝えられないもん」
「……なんだその屁理屈は…」
これ以上は不毛なやり取りになる事を察し、ヘリオは呆れながらも抵抗を辞めた。
それを見たアリスは、何度もヘリオにキスを繰り返し、キスの合間に想いを伝えたのだった。
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