A.義姉さん
夏の暑さが落ち着き始め、過ごしやすくなった頃。
ガウラ宅の庭で、お茶をするガウラとヘリオとアリスの姿があった。
今後の事や近況報告など、話に花が咲く中、手土産のアップルパイに舌鼓を打ちながら話を聞いていたガウラは、ふとある事を思い出した。
それは以前、不滅隊屯所の前で怪我をしていたところを見つかり、家に連れていかれた時、アリスに「貴方は義理とはいえ俺の姉さんなんです」と言われたことだった。
普段、呼び方などは気にしないガウラだが、アリスのヘリオに対する呼び方が、先輩、ヘリオさん、ヘリオと変わったのを見てきたガウラは、少しアリスをからかいたくなった。
「ところで、アリス」
「はい?なんですか?ガウラさん」
「お前はいつになったら、私を義姉さんと呼んでくれるんだい?」
「えっ!?」
明らかに動揺するアリス。
そうそうこの顔、とニヤニヤするガウラ。
「ヘリオの呼び方は変わったのに、私だけ変わらないのは何でだと思ってね」
ガウラがアリスをからかっていると気付いて、ヘリオは苦笑する。
それに気づかないアリスは、恥ずかしそうに答えた。
「いや、なんか今更感が凄くて呼べなかったんですけど…、呼んで良いんですか?」
「あぁ、呼べ呼べ」
囃し立てるようにガウラが言うと、アリスは「じ、じゃあ…」と意を決した。
「ね…義姉さん…」
照れくさそうに顔を赤くし、俯きながら呼ぶアリス。
それが予想外だったのか、吊られて照れくさくなるガウラ。
「お前っ!呼ぶならもっと堂々と呼びなっ!こっちまで照れくさくなるだろうっ!!」
「ええーっ!!だ、だって、改まって呼ぶと、なんか照れくさくてっ!!」
顔を赤くしながらアリスに抗議するガウラに、ヘリオは肩を震わせながら笑いをこらえている。
「ヘリオ!お前は何笑ってんだいっ!!」
「痛ぅ~っ」
ガウラにデコピンされ、額を抑えるヘリオ。
「ヘリオ!!大丈夫か?!」
「心配しなくも手加減はしたよ、大袈裟な…」
「…手加減した割には、かなり痛かったぞ…」
ヘリオの額が赤くなってるの見て、すかさずケアルをかけるアリス。
「ガ…ッ、義姉さんっ!!ヘリオに八つ当たりしないでくださいっ!!」
「八つ当たりなもんか!!笑ってるこいつが悪いっ!!」
ギャイギャイと2人は言い争い、それをヘリオが仲裁した。
その日から、アリスはガウラを「義姉さん」と呼ぶようになったのだった。
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