A.髪の真相


荒野を進む1台のレガリア。
レガリアには、運転手のアリス、助手席にヘリオ、後部座席にはガウラが乗っていた。
2週間前にガウラに頼み込み、故郷へ着いてきて貰うことを承諾してもらったのであった。

「故郷に着いたら、何をしたらいい?」
「いつも皆、出迎えてくれるので、その時に俺の髪を見て動揺するような素振りをする人が居ないか見て欲しいです」
「分かった」
「その後は家の掃除と、夕飯の時間前に子供達の相手をして、夕飯が終わった頃に、動揺した人物を家に呼んで話をしようと思ってます」

運転をしながら、ガウラの質問に答えるアリス。

「明日は、花を摘んで、そのまま墓参りをしたら、皆に挨拶してテレポで帰りましょう」

明日の予定も確認がてら話す。

「それにしても、何も無いな」
「あはは!移動中は退屈ですけど、我慢してください、義姉さん」

身体が訛りそうだとボヤキながら、後部座席で背伸びをするガウラ。

「そう言えば、今回ヴァルさんは着いてきてるんですか?」
「いや、お前らと一緒なら心配いらないと別行動だ。それに、母親に呼ばれてるらしくてね。里に戻ると言っていた」
「そうですか」

ヴァルがヴィラに呼ばれている用件がなんなのか察してしまったアリスは、苦笑いをしていた。
恐らく、ヴィラに注意を受けているだろうと思うと、次に会うのが怖くもある。
そんな事を考えていると、レガリアは森に入る。
そして、森を抜けると集落が姿を現した。

「あそこかい?」
「はい。義姉さん、よろしくお願いします」
「あいよ」

集落の入口でレガリアを停め、3人が地に足を付けると、ルガディンのおじさんがそれに気が付いた。

「おー!アリスの坊主!今回は来るのが遅かったじゃねぇか!」
「おじさん!お久しぶりです!すみません、色々忙しくて命日に来れなかったんです」
「お陰で、今年の祭りの舞は散々だったぜ…。来年は─」
「全力でお断りします!」

アリスの全力否定に「つれねぇなぁ」と笑うおじさん。
そんなやり取りで、アリスに気が付いた人達が集まってきた。

「アリス!おかえり!」
「どうも!ただいまです!」
「今回はどれくらい此処にいるんだい?」
「明日の午後には帰りますよ」
「なんだい、もっとゆっくりしていけばいいのに」

慣れたように対応していくアリス。
すると、ルガディンのおじさんがヘリオ達に気が付いた。

「お!兄ちゃんも来てたんだな!」
「お久しぶりです」
「久しぶりだな!ところで、隣のべっぴんさんは…、アリスの第2婦人か?」

その言葉に固まるアリスとガウラ。

「違います!この人はヘリオの双子のお姉さんで…っ」
「ほぉー、姉弟を揃って落としたかぁ、なかなかやるなぁ」
「違ーうっ!!」

顔を真っ赤にしながら慌てふためくアリス。
ポカーンとしているガウラに、小さく肩を震わせ笑いをこらえているヘリオ。

「ちょいとアンタ!アリスをからかうんじゃないよ!女の子の方も唖然としてるじゃないか!」
「いやぁ、アリスの反応が面白くてなぁ!」

ガハハと笑うおじさん。
この人は相変らすだと、溜め息を吐くアリス。
気を取り直して、アリスはガウラを紹介した。

「この人は、ヘリオの双子のお姉さんのガウラさん。俺の義姉さんでもあります」
「ガウラ·リガンです。去年は弟達がお世話になりました」

ガウラが一礼すると、皆が口々によろしくと挨拶をする。
その時、人混みを掻き分けてリンダが姿を現した。

「アリス!おかえりなさい!」
「リンダちゃん!ただいま!」
「ヘリオさんも、いらっしゃい!」
「あぁ」

そこで、ふとガウラに気付いたリンダは、驚いた顔をして言った。

「アリス…2人目の奥さん貰ったの?」
「違うよっ!!リンダちゃんまでなんて事言うのさっ!!」

どっと笑いが巻き起こる。
なんとかその場を沈め、疲れきった顔でアリスは双子を連れて家へと向かった。


家の掃除が早く終わり、3人はテーブルを囲んでいた。

「義姉さん。怪しい人はいましたか?」

おもむろに尋ねるアリスに、ガウラは腕を組みながら答えた。

「最初にお前に声をかけたルガディン族と、その奥さん?が、一瞬だが驚いた顔をしていたよ」
「それ以外の人は?」
「それ以外は普通だったな。あの2人が何か知っているんだろうね」
「…そうですか。分かりました!ありがとうございます!」
「役に立ったなら良かったよ。最近はお前に助けられっぱなしだったからね」
「いや、それ以上にいつも助けられてるのはこっちですよ」

それから他愛のない会話をし、夕方になった頃。子供達の相手をする為に広場へと向かう。
既に子供達が集まっており、手招きをしていた。

「アリス兄ちゃーん!」
「おう!皆いい子にしてたか?」
「うん!今回はちゃんとお利口さんにしてたよ!」
「そうか!みんな偉いな!」

子供の相手をしているアリスを見て、ガウラがヘリオに尋ねる。

「去年もこんな感じだったのかい?」
「あぁ。ウルダハでも、よく同じような事をしている」
「へぇ~…」

すると、1人の女の子がガウラの元にやってきた。

「ねぇねぇ!お姉ちゃんも冒険者なの?」
「あぁ、そうだよ」
「女の人なのに凄いね!私、お姉ちゃんの冒険の話が聞きたい!」
「僕も聞きたい!」
「俺も!」

子供達が口々に囃し立て始める。

「コラコラ!そんな急に…」
「構わないよ。子供の相手は得意だからね!」
「義姉さん…、すみません、お願いします」

ガウラは気にするなとアリスの肩を軽く叩き、子供達の前に立つと冒険の話をし始めた。
時折、詩人として弾き語りも見せ、子供達は大はしゃぎだった。
そして、辺りが暗くなり始めた頃、夕飯だと声がかかる。
家に戻っていく子供達。
すると、最初にガウラに声をかけた女の子がガウラの元に来た。

「どうしたんだい?」
「あのね!私、大きくなったらお姉ちゃんみたいな冒険者になりたい!」
「おや、そうかい!じゃあ、冒険者になったら一緒に旅をしようか!」
「うん!約束ね!」

女の子はガウラと指切りをし、家へと走っていった。
そして、今度は家からお裾分けを持った母親達が現れる。
それを受け取っていると、ルガディンのおじさんの奥さんが出てきた。

「はい、アリス!たんと食べとくれよ!」
「はい!…そうだ!おばさん、夕飯が終わったら、おじさんと一緒に家に来てくれませんか?」
「なんでだい?」
「ちょっと話したいことがあって」
「…わかったよ。あとで邪魔するよ」
「お願いします」

そう言って、お互いに家へと帰っていく。
お裾分けをオカズに夕飯を済ませ暫くした後、ノックの音がした。
扉を開けるとおじさん夫婦がそこに立っていた。
挨拶もそこそこに、部屋に入ってもらい、席に着く。

「で、話ってなんだ?アリスの坊主」
「俺の髪の毛の事です」

明らかに顔色が変わる夫婦に、アリスは一族のことは伏せ、何故今の髪になったのかを話し始めた。
どんどん険しくなる夫婦の表情に、アリスは詰め寄った。

「おじさん、おばさん。何か知ってるんでしょ?話してくれませんか?」
「……」
「アンタ…話しても良いんじゃないかい?もう、この世にラナさんは居ないんだし…」
「…そうだなぁ」

すると、おじさんはポツリポツリと語り始めた。
アリスの母親が産気づいた時、運良く集落に父親も来ていたのだという。
長い陣痛と戦い、生まれたアリス。
その時、母親のラナは気が抜けたのか、そのまま気絶してしまったのだという。
生まれたアリスを見て、産婆をしたおばさん、父親のアク、立ち会っていたおじさんは、アリスの髪が真っ白だった事に驚いた。
だが、目を開けたアリスを見て、アクはこう言ったそうだ。

"この子は間違いなく俺の子だ!ほら!俺と同じ目の色をしてるじゃないか!"

嬉しそうにそう言ったアクに、おじさん達は戸惑ったらしいが、アクが言うには、ラナのいた集落には白い髪をした男も、緑の瞳をした男もいなかったと断言した。
だが、目を覚ましたラナがどう思うかを心配したアクは、おじさんに頼んでアリスに術をかけ、髪の色をラナと同じにしたのだというのが事の顛末だった。

「俺は、アクと同じ船で船医をしていてな。簡単な魔法なら使えたし、アクには借りがあったからな。今まで黙っていてすまなかった」

頭を下げるおじさんに、アリスは「そうだったんですね」と静かに答えた。

「話してくれて、ありがとうございます」

アリスはそう言うと、少し近況の報告をしておじさん夫婦を帰した。
謎が1つ解け、一息つく3人。

「で、帰ったらどうするつもりだい?」

ガウラの問いかけに、アリスは少し考えてから答えた。

「今回のことをヴィラさんに報告して、この魔力がどこから来たモノなのか調べようと思ってます」
「宛はあるのか?」

アリスの言葉に、今度はヘリオが尋ねる。

「んー、あると言えばある…かなぁ」
「なんだその曖昧な答えは…」
「いや、どこまで話していいか分からなくてさ。黒と白、両方の一族に関わる事ってだけは言える」
「ほう」

ガウラとヘリオは顔を見合わせた。
アリスは何を知っているのか?
だが、黒き一族にも掟があるのだろうと、2人はそれ以上は問い詰めなかった。


翌朝、3人は花畑で黄色いラナンキュラスを摘み、墓参りにやってきた。

「随分見晴らしがいい場所だね」
「はい!母さんは海を眺めてることが多かったので」
「なるほどね」

3人は花を墓前に添え、黙祷をする。
そして、ガウラは竪琴を取り出し歌い始めた。

死者の魂を弔うレクイエム。

その美しい歌声は、風に乗って死者の魂へと届く様な気がした。


そして、集落の皆に挨拶を済ませ、3人でガウラの家へとテレポをした。
帰りを待っていたヴァル。
アリスに対しての当たりが強い事を母親に注意されたヴァルは、アリスに八つ当たりをしたのは言うまでもなかった。




とある冒険者の手記

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