C.再会と出会い
イシュガルドの千年戦争を終結させた英雄ガウラ·リガン。
その噂は瞬く間にエオルゼア中に広まり、カルの耳にも届いた。
「ガウラちゃん、冒険者になってエオルゼアの英雄の次は、イシュガルドの英雄か…凄い…」
ディッケルの家で別れを告げて以来、会っていない幼かった少女が、今や世界を救った英雄として活躍しているのに、心底感心していた。
「それに比べて…僕は…」
グリダニアに来て、幻術師になったはいいが、母と姉を失ったトラウマで戦場に向かえず、ヒーラーとしての仕事が出来ないでいるカル。
助けられる命が助けられない自分。
理想と現実の狭間で、葛藤していた。
エーテライトプラザからマーケットに向かっている途中、突然声をかけられた。
「カル?カルじゃないか!」
振り向くと、そこには1人のミコッテの女性。
その顔は、見覚えがあった。
「もしかして…ガウラちゃん?」
「そうだよ!久しぶりだね!」
嬉しそうに駆け寄ってくるガウラ。
突然の再会に、驚きながらも笑顔を見せるカル。
「元気にしてたかい?」
「えぇ、ガウラちゃんは元気みたいですね。噂、聞いてますよ」
「あはは、まぁ、カルの耳に届いてても可笑しくはないか」
苦笑いしながら答えるガウラ。
「無事に幻術師になったんだね」
「はい。でも、戦場には行ってないんです」
「どうして?」
「母と姉を失った事がトラウマになってるみたいで、戦場に向かおうとすると、身体に支障を来すんです」
落ち込み気味にそう言うと、ガウラは「そうなのか」と少し神妙な面持ちをする。
「トラウマって、自分でなんとかなるようなもんじゃないからね…、いつかそれが払拭されるといいな」
「はい」
「その時がきたら、一緒にダンジョンでも行こう!」
「えぇ、その時はお願いしますね」
そう言って、2人はトームストーンで連絡先を交換した。
「あ!」
「ん?どうした?」
「いえ、大人の女性に未だにちゃん付けはおかしいかと思って」
「あはは!好きなように呼んだらいいさ!」
「じゃあ、これからはガウラさんと呼ばせていただきますね」
そう会話をして、ガウラはこれからアラミゴの方に向かうと言って立ち去った。
そういえば、最近バエサルの長城で動きがあることを双蛇党から聞いていた。
「君はまた、戦火の中を進んでいくんですね…」
ガウラが去った方向を見つめていると、後ろから声がした。
「チッ、一足遅かったか…」
振り返ると、そこにはガウラと瓜二つの男が立っていた。
驚きつつも、カルは声をかけた。
「あの、もしかしてガウラさんを探しているんですか?」
「あぁ、アンタ、アイツの知り合いか?」
「はい。ガウラさんはアラミゴの方に向かうと言ってました」
「…そうか、礼を言う」
そう言って男も去っていった。
彼女と瓜二つの男。
ひょっとして、彼女の親族なのだろうか?
もし、そうであれば、少しはガウラの記憶が戻るきっかけになればいいと、カルは思ったのであった。
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