A.暁の血盟の顔合わせ
モードゥナにある、暁の血盟の拠点である石の家。
その前に緊張した面持ちで立っているアリスの姿があった。
その隣にいるのは義姉であるガウラ。
ヘリオはと言うと、賢具を扱うための知識を得る為、オールドシャーレアンに向かっており不在だった。
暁の血盟に入る決断をしたアリスは、オールドシャーレアンに向かうヘリオをリムサの港で見送った後、ガウラの家へと向かい、暁の血盟に入りたいと言う旨を伝えた。
最初は「ダメだ」と断られたが、迷惑を承知で泊まり込みでの説得を開始。
ガウラ宅にいたヴァルとも衝突をしたが、最終的にアリスのしつこさに観念したガウラは、溜息を吐きながらそれを承諾した。
そして、今日は暁の血盟のメンバーとの顔合わせだった。
「話しは通してある。入るぞ」
「はい!」
ガウラに続いて、石の家の中へと入ると、そこにはメンバーが勢ぞろいしてこちらを見ていた。
その中には、見知った顔が2人ほどいた。
「集まってもらって悪いね」
「他ならぬお前が連れてくる参加希望者だ、構わないさ。後ろに連れてる奴がそうか?」
「あぁ」
ガンブレーカーの男がガウラの言葉に答える。
ガウラはアリスを紹介した。
「この前話した、暁の血盟に入りたいと希望してきた私の義弟だ」
「フ·アリス·ティアです!よろしくお願いします!」
大きな声で挨拶をし、お辞儀をすると、クスクスと小さく笑う黒魔道士のミコッテ·サンシーカーの女性。
「ふふっ、元気がいいわね。私はヤ·シュトラ·ルルよ、よろしく」
「俺はサンクレッド·ウォータースだ。よろしくな」
ヤ·シュトラに続き、ガンブレーカーのサンクレッドが自己紹介をする。
すると、次は占星術師のエレゼンが1歩前に出た。
「私はウリエンジェ·オギュレと申します。以後お見知りおきを」
そして、学者のエレゼンの少年が「次は私だね」と1歩進み出た。
「私はアルフィノ·ルヴェユール。そして、私の隣にいるのが妹の…」
「アリゼー·ルヴェユールよ。ガウラから話を聞いてまさかとは思ったけど、貴方だったとはね」
「おや、アリゼーは彼を知ってるのかい?」
アルフィノの質問に「知ってるも何もっ!!」と怒りを滲ませるアリゼー。
「こいつはね!ラハとの修行の休憩中に、私達の足元にくないを投げつけてイチャモンを付けてきたのよ!」
その言葉にアリスは黙って居られなかった。
「それはそちらが場所も考えずに修行をして、義姉さんやヘリオを危険に晒したからでしょう!?特にそっちのミコッテの人!その人の矢がヘリオの傍を通過して、寝てる義姉さんの隣にいたギガントードに当たったんですよ!?それを聞いたら身内として黙って居られないのは当然でしょう!!」
アリスに正論を言われ、グッと口篭るアリゼー。
静かになった所で、赤髪のミコッテの男が申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。
「フ·アリス、あんたの言うことはごもっともだ、ガウラとヘリオを危険な目に会わせて申し訳なかった」
「いえ、次から気をつけてくれればいいです」
「あぁ、約束するよ。と、自己紹介がまだだったな。俺はグ·ラハ·ティアだ。これからよろしくな!」
そして、最後にララフェルの女性が前に出た。
「私はタタルでっす!暁の血盟のお財布を管理する金庫番で、皆さんを影からサポートしていまっす!よろしくお願いしますでっす!」
「あとはもう1人、竜騎士のエスティニアン殿がいるのだが、今は別件で席を外していてね、後で私から紹介させてもらうよ」
「分かりました」
アルフィノの言葉に、頷くアリス。
主要メンバーの自己紹介が終わり、サンクレッドが口を開いた。
「所でフ·アリス。お前は何ができるんだ?見たところ、ナイトのようだが」
サンクレッドの言葉に全員がアリスに注目する。
「えっと、今はナイトですけど、その前は忍者をしていたので、偵察や隠密行動も出来ますし、ヒーラーとして白魔法も使えます。あとは詩人としてサポートも出来ますし、キャスターとして赤魔法も出来ます」
「オールラウンダーか、これは良い戦力になりそうだな」
「実力は保証するよ。だが、無茶もするから注意が必要だけどね」
「あら、それは貴方も同じではなくて?」
「………」
ガウラの補足にヤ·シュトラの指摘が入る。
バツの悪そうな顔をするガウラ。
「そういえば、今クルルさんが我々のオールドシャーレアンへの入国の為に動いてくれているけれど、フ·アリスも同行させるのかい?」
アルフィノの言葉に、ガウラが"同行させなくていい"と言おうとすると同時に、大きな声で"同行させてください!"とアリスが言い放った。
「アリス。お前まさか、ヘリオを追う為に暁に入りたいって言い出したんじゃ…」
「違いますよ!」
ガウラの言葉を否定するアリス。
「俺は大事な人達を護りたいんです。でも、今のままじゃそれは叶わない。そう思ったから暁の血盟に入りたいって思ったんです。それに、調べたい事もあるし…」
「調べ物ならグブラ幻想図書館でも充分だろ」
「俺の調べたい物はグブラで全部調べました!でも、見つからなかったから…」
アリスの言葉に唖然とする一同。
「待ってちょうだい。貴方の調べたい物って言うのは?」
「エーテルに関する書物です。グブラにあるエーテル関係の書物は、全部読んでしまったので…」
「全部って…あそこにある書物の中には古代文の物もあったはずよ」
「はい、それも全部。古代文に関する書物で解読しながら読みました」
ヤ·シュトラは驚いたが、直ぐに考える素振りを見せて言った。
「今回、オールドシャーレアンに行くにあたって、調べ物に強い人物が多いに越したことはないわ」
「確かにな。オールラウンダーで、調べ物にも強いと来たら即戦力だ。ガウラ、お前さんは連れて行きたくないみたいだが、人手はあった方がいい」
ヤ·シュトラとサンクレッドに言われ、大きな溜め息を吐くガウラ。
「仕方ない…わかったよ」
「やった!」
「その代わり約束してくれ、体を張って怪我だけはするな」
「はい!約束します!その為に俺は盾を持ったんですから!」
ガウラの言葉に、アリスは胸を張って答えた。
「そうと決まれば、クルルに至急、1人増えることを知らせないとだな」
「クルルさんへの連絡は任せてくださいでっす!」
話が纏まり、各々が動き出した。
頑張るぞー!と気合いを入れているアリスを尻目に、ガウラの表情は浮かなかった。
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