Another HERA━挨拶━[前編]


アリスとヘラが恋人になり、1年が経過した。
1年目を機に、アリスは改めてプロポーズをし、ヘラはそれを受け入れた。
そして、今2人は黒衣森の最奥へと向かっていた。
エタバンをするなら、ヘラの両親に挨拶をしたいとアリスが言い出し、ヘラの故郷へ案内してもらっていた。

「もう少しで着くよ、アリス」
「そっか。なんか緊張してきた…」

表情が強ばるアリスに、小さく笑うヘラ。

「僕の両親はそんな怖くないよ?」
「いや、ほら。よくお父さんが"お前なんかに娘はやらん!"みたいなのをよく聞くからさ…」
「ふふっ、アリスは心配性だね。そういう所、父さんとそっくり」

笑うヘラの表情に、少し緊張が和らぐアリス。
すると、ヘラは前方を指さした。

「あそこだよ!僕の故郷!」

久しぶりの帰省のせいか、いつもよりテンションが高めのヘラ。
故郷の中に入ると、そこにはヘラと同じような色白の肌に白い髪の人達が、こちらを一斉に見ていた。

「ヘラじゃないか!」
「ただいま!」

皆、ヘラを囲むように集まってくる。
その中で、人混みを掻き分け、ヘラへと向かうヴィエラ族がいた。

「ヘラ!おかえりー!」
「ナキちゃん!ただいま!」

熱く抱擁を交わす2人。
それだけで仲の良さが伝わる。

「今日はどうしたの?」
「えっとね、あの、父さんと母さんに紹介したい人が居て…」
「紹介したい人?」

少し照れくさそうに言うヘラに、首を傾げるナキ。
すると、ヘラは「みんなにも紹介するね」とアリスの元へと戻ってくる。

「えっと、僕の…恋人です」
「どうも、はじめまして。フ·アリス·ティアと言います」

紹介され、お辞儀をするアリス。
暫く沈黙が続いた後。

「えぇぇぇええええっ!!」

驚きに声を上げるナキ。
周りの人達は口をあんぐりしている。
そして、1部数人は、アリスに対して明らかに敵意の視線を向けていた。
その敵意の視線に、一瞬顔が引き攣るアリス。
そんな事には気づかず、ナキとヘラは話をしている。

「イケメンで優しそう!ヘラにお似合いだね!」
「そ、そうかな…」

ナキに言われ、照れ笑いをしながら答えるヘラ。

「ねぇねぇ!どこで知り合ったの?告白はどっちから?キスはしたの?」
「え、ええっ!」

ナキの質問攻めに、慌てるヘラ。

「ぼ、僕、アリスを紹介しないといけないからっ!行こうアリス!」
「えっ!あっ、うん!」

顔を真っ赤にし、アリスの手を引き、その場から逃げるヘラ。
手を引っ張られながら、その場にいた人達に頭を下げるアリスだった。


************


「ご、ごめんね、アリス」

走って辿り着いた家の前で、息を切らしながら言うヘラ。

「いや、大丈夫だよ。ヘラこそ大丈夫?」
「う、うん」

アリスが優しくそう言うと、ヘラは申し訳なさそうに返事をした。

「それで、ここは?」
「えっと、ここが僕の実家なんだ…」
「ここが…」

家の前に来ると、改めて緊張するアリス。
すると、そこに洗濯物を抱えた女性が現れた。

「おや、ヘラかい?」
「母さん!ただいま!」
「おかえり」

ヘラの母親はアリスを見て驚いた顔をした。

「ヘラ、その人は?」
「えっとね…、僕の恋人…なんだ」
「は、はじめまして!フ·アリス·ティアと言います!」

緊張でガチガチになりながら、お辞儀をするアリス。
娘が恋人を連れてくるとは思っていなかったのか、母親は目を見開いたが、直ぐに笑顔になった。

「そうかい、ヘラがついに恋人をねぇ」
「うん…、でね、母さんと父さんに大事な話があって…」

そのヘラの言葉に何かを察したのか、母親は意味深な笑みを浮かべた。

「父さんは家にいるよ、2人とも家に入りなさい」
「うん」
「お、お邪魔しますっ」

緊張しているアリスを見て、ふふっと笑う母親。
室内に入ると、母親は「今、呼んでくるから」と、奥の部屋に入って行った。
すると、直ぐに母親と一緒に父親と思われる人物が姿を現した。

「ヘラ!おかえり!」
「ただいま、父さん」

ヘラに近寄ろうとして動きが止まる父親。

「ヘラ、その男性は誰だい?」
「え、えっと…」

さすがに父親には言い出しづらいのか、口篭るヘラ。
アリスは意を決して口を開いた。

「はじめまして。俺はフ·アリス·ティアと言います。娘さんとお付き合いをさせていただいてます」

お付き合いの言葉に、完全に固まった父親。
それを見て苦笑する母親。

「ヘ、ヘラや…お付き合いって…ほ、本当なのかい?」
「う、うん…アリスは僕の恋人…」

父親にとって衝撃の言葉だったのか、一瞬ふらついた。
慌ててそれを支える母親。
何とか父親を椅子に座らせた母親は、ヘラとアリスに座るように促し、自分も椅子に座った。
全員が席に着いたところで改めて自己紹介をする母親。
父親は集落の族長で、母親はジシャと名乗った。
父親が落ち着くのを待っている間、重苦しい空気が4人を包んでいた。
緊張で強ばっているアリスの顔。
空気の重さに、戸惑いながら俯いているヘラ。
片手で顔を覆っている父親の背中をさすっているジシャ。
永遠とも思える重苦しい時間。
何とか落ち着いた父親の様子を見て、ジシャが口を開いた。

「それで、今日ここに帰ってきたのは、恋人を紹介する為だけじゃないんだろう?」

室内が張り詰めた空気になる。
だが、その空気に圧されていては話が進まないと、アリスは顔を上げた。

「今日は、お2人に大事なお話があって、お伺いしました」
「…その、大事な話と言うのは?」

父親が緊張した面持ちで尋ねる。
アリスもまた、緊張した面持ちで、ハッキリと答えた。

「ヘラと…、娘さんと結婚させてくださいっ!!」
「っ!?」

結婚の言葉に、顔が引き攣る父親。
分かっていたかのように平然としているジシャ。
ヘラは顔を紅くして俯いている。
すると、父親はフラフラと席を立った。

「すまない…頭の整理がつかないから、少し失礼する…」

そう言って、奥の部屋へと引き篭ってしまった。
その様子に唖然とするアリスとヘラ。
苦笑いをしながら、ジシャは2人に言った。

「父さんを落ち着かせておくから、その間に2人は集落を見て回るといい。ヘラ、案内しておやり」
「う、うん。アリス、行こう?」
「うん…。あの、失礼します」

アリスはジシャにお辞儀をし、ヘラと共に家を出た。
それを見たジシャは夫を落ち着かせる為に、奥の部屋へと入っていった。



とある冒険者の手記

FF14、二次創作小説 BL、NL、GL要素有 無断転載禁止

0コメント

  • 1000 / 1000