A.離れている間の変化


降り立ったオールド·シャーレアンの地。
船から降りる時に手間が掛かり、サンクレッドがボヤいていた。
入国の表向きの理由は[バルデシオン委員会の助っ人]という事で、グ·ラハ引率の元、入国審査を無事に終えた。
出迎えたクルル。
初対面のアリスに気が付き、声をかけてきた。

「あなたがフ·アリスくんかしら?」
「はい!初めまして!フ·アリス·ティアです!急な同行に対応していただいてありがとうございます!」
「ふふっ、話に聞いてた通り、元気で礼儀正しいのね。私がクルルよ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」

挨拶もそこそこに、一旦自由行動にしようと言うクルルの提案で、集合場所を聞いたアリスははやる気持ちが抑えられず、"ヘリオを探しに行ってきます"と、そそくさと別行動を取った。
散策も兼ねてヘリオを探す。
近くに居れば、エーテルの香りで分かるだろうと、ぶらぶらと歩くが見つからない。
そして、高い所から見渡せば見つけられるかもと思い立ち、哲学者の広場前まで来たが、死角が多く、思うように見つからない。

「1番上の層まで来たら、見渡せるからいいと思ったんだけどなぁ…どうしよ…」
「どうしようなぁ」
「ん?」
「やぁ青年、その顔さては迷子だな?」

声の方を見ると、そこには自分より背の高いヴィエラ族の男が立っていた。
初めて見るヴィエラ族の男に、一瞬呆気に取られる。

「えーっと…」
「今日は旅人の出入りが多い日だ、グリーナーも出入りが多い」
「グリーナー?」
「シャーレアンの外から色んなものを収集する者さ。動物や食料、物資、何なら知識まで。ボクもグリーナーで、主に薬草の収集をしている」
「ほぇー…」

初めて聞く職業とその内容に、新鮮さを感じて感動するアリス。
初対面だからか、それとも地域柄なのか、少し距離のある言い方ではあるが、そんな事は気にならないアリス。
と言うのも、ヘリオと初めて会話した時の方が、かなり突き放された話し方をされていたからであった。

「ここにいたのかい」
「あ、義姉さん!…と、ヘリオもいたのか!」

聞き覚えのある声。
見ればそこにはガウラと、探し人のヘリオの姿。

「おや、ヘリオじゃないか」
「その声、カリアか」

カリアと呼ばれたヴィエラ族の男は、どうやらヘリオと顔見知りらしい。
自ら顔見知りを作っていることに、内心かなり驚くアリス。

「知り合いなのかい?」

ガウラがヘリオに問うと"ここに来てしばらくしてから知り合った、グリーナーだ"と答えた。
話を聞くと、カリアが探していた薬草をヘリオが持っており、それから、時々情報をやり取りしているとの事だった。
それを聞いたガウラも、驚きを隠せないようだった。

「へぇ。何だか意外だねぇ、ヘリオに友だちができるなんて」
「?」

キョトンとしているヘリオとは対照的に、「いいでしょ~」と満面の笑みのカリア。
ヘリオの初の友だちと言うことで、ガウラとアリスも軽く自己紹介をした。
ヘリオに友だちが出来たことに驚いたが、嬉しくもあるアリス。
"エーテル体"としてでは無く、"人"としての成長を感心していた。


************


カリアと別れ、バルデシオン分館に来たアリス。
部屋が足りず、どうしようとなったが、"ナップルームは2人で使え、どうせ依頼を受けたりで出入りが多いから、空いているタイミングがあればその時に使う"と、言うことをガウラは言い、荷物を軽くまとめ、足早に新たな依頼をこなしに出て行った。

その足取りの軽さに呆気に取られる2人。

「……」
「…レディーファーストのレも言う暇がなかったんだけど」
「いつものことだろう」

苦笑しながら、そう言う2人。
この先も、ガウラの行動力はこのままなのだろう。
そう考えると、ガウラを護るヴァルの苦労が垣間見える気がしたアリス。
ヘリオに渡されたガウラの荷物もある為、部屋に入る事にした。
部屋に入ると、机には本が束になって置かれていた。
適当な場所に荷物を置くヘリオを横目に、本の背表紙を見る。

「なんか、賢学と関係無い本も混じってないか?」
「あぁ、それか…。あんた、オールドシャーレアンで食事をする時は気をつけた方がいいぞ。食えたものではないからな」
「えぇ……マジか……」

オールドシャーレアンの食文化はどうなっているのか…。
引き攣った顔をしているアリス。

「その辺は、暁の奴等に聞けば分かるはずだ」
「……分かった……」

そう答え、アリスも自分の荷物を邪魔にならない所へと置く。

「あ、そうだ。黒の祖について、少し分かった事があったんだけど…」
「こちらも、白の祖について分かったことがある」
「本当に!?あ、でも、義姉さんが居る時に話した方がいいよな。2度説明することになるし…」
「そうだな」

こうして話は、離れていた間にどんな事があったかと言う日常の話に変わった。
久しぶりのヘリオとの会話に、テンションが高くなるアリス。
ヘリオの方も、久しぶりに見る相変わらずなアリスの様子に、心做しか苦笑している様な表情で話を聞いている。
2人の近況報告は、メインホールへの集合の呼び出しが来るまで続いたのだった。







とある冒険者の手記

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