V.ヴァルの地雷


オールドシャーレアン行きの船の中。
船員として紛れ込んでいるヴァルの姿があった。
化粧で肌の色を変え、服はハイネックタイプの長袖と長ズボン。
手袋を着用し、髪型、髪色も変えていた。
船員の仕事をこなしつつ、ガウラの様子を遠目から見守る。
彼女の周囲で変な動きがあれば、すぐに動けるように、警戒を怠らない。
まぁ、暁の血盟のメンバーが誰かしら傍に居るので、危険は無いだろうが、万が一という事がある。
ただでさえ、彼女は何かのトラブルに巻き込まれやすいのだから…


何事もなくオールドシャーレアンに着くと、ヴァルは誰にも気づかれないように船を降りた。
船を降りる際に何かの検査があるのか、乗客はなかなか降りてこない。
その隙にヴァルは宿を取り、化粧を落とし、髪色を戻し着替えをする。
そして、いかにもここの住人と言う姿に変え、宿の窓からこっそりと抜け出し、堂々と街に溶け込む。
髪型と服装を変えるだけで溶け込めるのは、ここに来るのが初めてだからである。
顔見知りと言ったら、先にここにいるヘリオと、今さっき同じ船に乗っていたガウラとアリスくらいなものだ。
そして、ヴァルは先にオールドシャーレアンの偵察に来て、情報を伝達していた協力者との待ち合わせ場所に向かった。
偵察をしていたのはザナ。
ヴァルを見つけると、嬉しそうに手を振った。

「ご苦労だった」
「お前の為なら何だってするさ」
「はぁ………本当に相変わらずだな……」

大きく溜め息を吐き、辺りに人がいないことを確認して、ヴァルは小声で話し始めた。

「守備は?」
「先日、バルデシオン分館の方にサベネア島から依頼が来てる。恐らく、各地に現れた塔絡みだろう」
「…なら、ガウラはそっちの依頼を優先しそうだな…」
「ヴァルはサベネア島に行ったことあったよな?」
「あぁ。あの時の依頼内容は、錬金術のレシピを盗んで来るって依頼だった」

ザナの言葉にそう答えると、ヴァルは考える仕草をする。
サベネア島に行く為の支度の算段を頭の中で構築していく。
その時、聞き覚えのある声がした。
ヴァルは咄嗟に身を隠す。
ザナも同じように身を隠した。
声のするほうを見ると、ガウラとヘリオが会話をしながら歩いているのが見えた。

「なぁ、ヴァル。あれがヘラか?」
「あぁ」
「ふーん。確かに美人だけどさぁ。ヴァルの言う可愛いとは程遠いと思うんだが…」
「………なんだと?」

ザナの言葉に、ヴァルの声に怒気が混じる。

「可愛いというより、どちらかと言うとカッコイイじゃないか?どこが可愛ィィイイイイイイッ!!!」

言葉の途中で悲鳴をあげるザナ。
原因は、ヴァルがブーツのヒールで、思いっきりザナの足を踏みつけたからだった。

「あたいの前でヘラの批判を言うとは、いい度胸だなぁ?ザナ」
「痛い痛いっ!悪かった!俺が悪かった!」
「ふんっ!」

ザナの足を解放すると、ザナは踏まれた足を上げてピョンピョン跳ねて痛がる。

「ヘラの可愛さは、あたいが分かっていればいい。お前なんかに理解されてたまるかっ」

完全に機嫌を悪くしたヴァルは、ザナの元から去った。
それを見て、ザナは“やらかした“と後悔したのであった。





とある冒険者の手記

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