A.甘い時間
義姉のガウラがサベネア島に出発して数日が経った。
ヘリオとの再会後、アリスは離れていた期間が長すぎたせいか、毎晩寝る前にキスの雨を止めることが出来なくなっていた。
「んっ…ふっ…はぁっ」
「ヘリオ…好き…」
容赦なくキスを繰り返され、さすがに勘弁願いたいと思うヘリオは、アリスの口を手で塞いだ。
「あ、あんた、再会してから毎日これは流石に勘弁してくれ…」
「あ…ごめん…」
明らかにションボリするアリス。
確かにやり過ぎ感はあるものの、気持ちが暴走していて、抑えられずにいた。
お預けを食らった子犬の様な表情のアリスに、ヘリオは大きな溜め息を吐くと、アリスに問うた。
「……どうしたら、あんたは満足するんだ……?」
「え…?」
予想外の言葉に、キョトンとする。
「満足出来ないから…その…毎日するんだろ…?」
「満足と言うか…気持ちが治まらないというか…」
考えるように答え、「あ、でも!」と思いついたように声を上げた。
「ヘリオからキスしてくれたら治まるかも!」
「…………………は?」
露骨に呆れた声が出るヘリオ。
その反応に、アリスは内心焦った。
「じ…冗談だよ冗談!あはははっ!」
「………………」
乾いた笑いを上げながら弁解する。
すると、おもむろに胸ぐらを捕まれ、アリスの顔から血の気が引いた。
「ご、ごめん!言っていい冗談と悪い冗談があるよな!だから、怒らないd………んんっ!?」
突然のことに目を見開く。
目の前には眉間に皺を寄せ、頬紅くしながら目を閉じているヘリオの顔が近くにある。
唇には柔らかい感触。
その感触が離れると同時に、胸をグッと押された。
「……満足したか?」
顔を赤面させたままアリスを睨みつけ、袖で口を拭いながら言い放つヘリオ。
キスをされたと理解した瞬間、アリスの顔が沸騰するんじゃないかと思うほど熱を持つ。
そのままヘリオの肩口に顔を埋め、アリスは弱々しく答えた。
「………大満足デス………」
「……ふんっ」
顔だけそっぽを向くヘリオ。
アリスはそのままヘリオを抱きしめた。
「ヘリオ…好き……大好き……」
「…知ってる」
「………愛してる……」
滅多にされないヘリオからのキスで満足したのか、次の日からはいつも通りのスキンシップに戻ったアリス。
それは、つかの間の甘い時間だった。
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