V.転送装置の副作用


ヴァルの予想通り、ガウラはサベネア島の依頼を優先した。
試作品のテレポ装置を使って移動することを聞き、ヴァルは一足先にテレポでイェドリマンへと飛ぶ事にした。
口元を隠した商人に変装し、イェドリマンに到着すると、ヴァルは目を疑った。
テロフォロイの塔が出現した影響なのか、かつて賑わっていた港町は閑散としていた。
少し市場調査をしてみると、なんとか収入を得ようとしているのか、相当な金額を吹っ掛けられる。
まぁ、まともな金銭感覚を持っていれば、引っかかることも無いだろうが…。
そんなことを考えていると、エーテライト周辺に、ガウラと暁一行が到着した。
が、ガウラとサンクレッド、ウリエンジェの顔色が悪い。
少し遅れてエスティニアンも到着した。
こちらはなんの問題も無さそうだ。
気配を殺し、何があったのかを知るために物陰から会話を聞く。
どうやら試作装置の副作用として、エーテル酔いを引き起こしているとの事だった。
酔いを覚ますために、飲み物を買ってくると立ち去ったエスティニアン。
彼の姿が見えなくなると、サンクレッドが弱々しく話し始めた。
エスティニアンの金銭感覚に注意が必要だと。
それを聞いたガウラが、青い顔を引き攣らせ、ヨロヨロと立ち上がり、エスティニアンを探しに歩き出した。
その姿が見ていられなかったヴァルは、素早くエスティニアンを見つけ、ガウラに近づく。

「竜騎士は入口付近の商店にいる」

すれ違いざまにそう伝えると、青い顔のまま、ガウラは一瞬ヴァルの方に振り向くが、よっぽど酔いが酷いのか、「ゔっ…」と呻き声を上げて口を手で抑えた。
そのままヨロヨロとしながらも足早にエスティニアンのいる方向へと向かっていった。


その後、無事にエスティニアンがぼったくられるのを阻止し、購入したアームララッシーで酔いを覚ました3人は、サベネア島の現状を調査しようと散らばった。
1人になったガウラは視線を辿り、建物の上に身を潜めているヴァルと目を合わせた。
ガウラは、声を出さず口を開いた。

─ありがとう、助かった─

口はそう動いた。
ヴァルはそれを見て、手を小さく振る。
ガウラは満足そうな表情をし、調査へと向かったのだった。



とある冒険者の手記

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