A.ラヴィリンソス
サベネア島に行っていた義姉のガウラが、バルデシオン分館へと戻ってきた。
メインホールにて状況が説明された。
テンパードにされるエーテルを遮断する護符が完成したが、依頼人であるニッダーナが塔に取り込まれてしまったという。
そして、塔の攻略準備ができ次第、協力を頼みたいとの事だった。
準備期間ということで一時帰還、その期間の間にシャーレアン議会の隠している秘密を調査することになった。
今回はアリスも同行する。
ガウラ、ヤ·シュトラ、グ·ラハ、アルフィノ、アリゼー、クルル、アリスの7人はヌーメノン大書院へ向かった。
まずはオールドシャーレアンの歴史に関する書物から攻めることになった。
大書院すぐ近くの東屋に本を置き、全員が本を開き目を通す。
アリスも、本を読むのに集中していた。
その姿をみて、ヤ·シュトラがガウラに言った。
「彼、エーテル学を独学で学んでいるだけあって、真面目ね」
「あぁ、私も最近知ったんだ」
「あら、そうなの?」
「住んでるところは別だからな。プライベートな所は私も分からないさ」
感心するヤ·シュトラに、そう答えるガウラ。
「でも、よく考えたら、出会ってから今までを見ると、かなりのスピードで実力が上がってたしな。努力の賜物だろうとは思うよ」
そんな会話をしつつ、再び本に目を通し始めた。
ある程度本に目を通したが、議会が隠している秘密に関係するような記載は見当たらず、調査は行き詰まった。
少し息抜きしようと、アリゼーがガウラを連れて離席。
その間も、アリスは黙々と本に目を通していた。
その後、戻ってきたガウラとアリゼーから、グリーナーの動きが活発になっているということで、ラヴィリンソスへと向かうことになった。
地下空洞を利用して作られたラヴィリンソス。
大掛かりな装置で地上と変わらぬ空と太陽。
その景観に驚きを隠せないガウラとアリス。
「凄い…」
溜め息の様にそう呟いた。
ここでは各地から集められた生き物や植物の生態研究がされているとの事だった。
とりあえず、現地にいるグリーナーに話を聞くこととなり、各自散らばった。
アリスが話を聞けそうなグリーナーを探していると、見知った顔を見つけた。
「カリアさん!」
「おや、こんな所で会うとは奇遇だな」
そこに居たのは、オールド·シャーレアンに来た時に知り合ったカリアだった。
「何故ここに?」
「あぁ、グリーナーの出入りが激しくなってるのが気になった人がいて、それで何が起こっているのか調べに来たんです」
「あー、なるほどね」
アリスの問に、カリアは参ったと言うように話し始めた。
「ここ最近、議会の方から突然どんな環境にも強い生物や植物を大量に収集して来いってお達しがあってね。ここで植物の栽培をしている人達も、僕達グリーナーもてんやわんやだよ。忙しすぎて仕事中に居眠りする人も出て来てるんだ」
「そんなに忙しいんですか?!」
「あぁ。理由を聞いても“いずれ分かる時が来る“としか言われないし、限界を感じてる人も多い」
溜め息混じりにそういうカリア。
「環境に強い生物や植物……か」
「それも、食用に使えそうな物ばかりでね。まったく、議会が何を考えているのか、こっちは検討もつかないよ」
「そうですか…、ありがとうございます!話してくれて」
「いや、こちらこそ話を聞いてくれてありがとう。愚痴を吐いたおかげで、少し気が楽になったよ」
お互いに礼を言い、アリスとカリアは別れた。
そして、情報収集が終わり、全員で集まった。
皆、聞いてきた話は同じだった。
その後、ラヴィリンソスの調査を進めていると、議会の人間に行動がバレ、哲学者議会へと連行された。
バレたきっかけは、グ·ラハの不注意であった。
そのせいで、オールド·シャーレアンでの行動に制限がかかった。
そして、バルデシオン分館で部屋を間借りしているヘリオにも少なからず影響があり、監視役の教授が着くことになったと言う。
それを聞いたグ·ラハが、ヘリオに平謝りをしたのは言うまでもなかった。
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