A.焦る気持ち


義姉のガウラがサベネア島から帰還し、頼まれたクリスタルを渡したアリスは、ナップルームで一人頭を抱えていた。
ヘリオの強くなっていくエーテルが、ガウラにも影響を及ぼしている。
気がついてはいたが、ガウラ本人から直接聞いてしまえば、気が気ではなかった。
受けるエーテルをクリスタルを使って制御するため、ネックレスを作り、ヘリオにも渡してくれと言われた。
だが、日に日に増していくヘリオのエーテルを視ていると、そのネックレスもいつまで保つか分からない。

「はぁ……考える事が増えたな」

頭をガシガシと乱暴に掻き、溜め息を吐く。
ヘリオのエーテルが何処まで増えるかも分からない。
これがもし、留まることを知らず、増え続けるものであれば、ガウラの体質を変える方法を見つけるか、ネックレスよりももっと効果の強い、エーテルを制御出来る物を作るしか無い。

「調べるにしても、ヌーメノン大書院で本を借りてきてもらう事が出来なくなったしなぁ……」

行動を制限されてしまっている今、個人的に調べていた記憶の複写の方法も、魔力と武力の枷の事も、八方塞がりになってしまっている。

「あっー!!くっそ!!これじゃ、母さんの時と同じじゃないかっ!!」

ダンっ!とテーブルに拳を叩き付ける。
看病しか出来なかった自分の過去。
悪くなっていく状況を変えられなかった無力感。
そして、笑顔で冷たくなっていった母親の体温の感覚が思い出された。

「なんとかしなきゃ……っ」

アリスは奥歯を強く噛み締めた。



とある冒険者の手記

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