A.極寒の地で知る、ガレアン人の愛国心


ガウラから渡されたネックレスをヘリオに渡した後、バルデシオン分館のメインホールに呼び出されたアリス。
そこには暁のメンバーが揃っていた。
そこで話された内容は、エオルゼアでイルサバード派遣団が結成され、ガレマルドの人達を救済する事になったと報告された。
また留守番になるのかと身構えていたアリス。
だが、意外にも同行を許され、アリスは身を引き締めた。
ガレマルドは極寒の地と言うのを聞き、寒さ対策の為の荷物を纏めていると、講義を終えたヘリオがナップルームに戻ってきた。

「ヘリオおかえり!」
「ただいま。何処かに出かけるのか?」
「暁の仕事だよ。ガレマルドに残ってる人達を助ける為に結成された、イルサバード派遣団と一緒に行くんだ」
「そうか、気をつけて行ってこい」
「うん!」

アーマリーチェストの中の武具も新しい物に新調したため、入れ忘れがないか確認する。
寒さ対策のファイアクリスタルも在庫も確保してある。

「よし!準備完了!じゃあ、行ってくる!」
「あぁ、行ってらっしゃい」

荷物を持って、集合場所であるアラミガン·クォーターへと向かった。

アラミガン·クォーターでタタルから防寒着を貰い、それにファイアクリスタルを仕込んだアリス。
そして、忍者をしていた経験から、偵察部隊としてサンクレッド達と陽動作戦へ。
暁に入る事が決まってから、ヴァルに頼み込み、修行をつけてもらったこともあってか、怪我をすることなく作戦を成功させることが出来た。

無事に辿り着いたキャンプ·ブロークングラス。
陣営を整える為、皆が各自持ち場に着いて忙しくしていた。
自分も何か出来ることは無いかと、色んな人達に声をかけ、手伝いを買って出た。
あちこち駆け回って手伝いをしていると、炊き出しが出来たらしく、配膳を頼まれる。
暁のメンバーに配るように言われ、手渡されたクリムゾンスープを一人一人渡していく。
そこでふと、義姉のガウラの姿が見えないのに気が付き、周りに聞いて歩く。
情報を元に探していると、キャンプから少し外れた所で、塔を見つめているガウラを見つけた。

「こんな所に居たんですか」
「アリスか、もう時間かい?」
「いいえ、陣営が整うまではまだ少し時間がかかるそうです。それより、ほら、どうぞ」

質問にそう答え、炊き出しを手渡す。

「これは…クリムゾンスープかい?」
「はい、イシュガルド兵の方々が、今皆さんに振舞ってるんですよ。[イルサバード派遣団ver.]とのことです」
「ふふ、なるほど」

その後、寒さを訴えると体調を心配された。
今は元気だと伝えると、ヘリオからの
[あんたはよく風邪をこじらせるから、よくよく注意するように。]
と伝言を言われ、茶化された。
そして、クリムゾンスープを飲むガウラに、エーテル面の調子を聞くと、ネックレスが正常に機能しているらしく、問題ないと言われ、ほっと一安心したのだった。


************


避難民らしき人影が目撃され、それを確認しにガウラ、アルフィノ、アリゼー。
大人数では相手を警戒させると言うのもあり、アリスは他のメンバーとキャンプに残る事にした。
キャンプにいる間、少しでも役に立とうと、相変わらずキャンプ内を走り回る。
そこで、兵達の会話が耳に入った。
ここにくる途中に襲ってきた、テンパード化した帝国兵。
なんとか生きたまま捉えることが出来たその者達のテンパード化を解く治療。
それには多くのエーテルを消費する為、人手が足りないとの事だった。
それを聞いたアリスは幻具を手に取り、治療の手伝いを申し出た。
自分の中に流れる白き一族のエーテル。
純血程ではないが、並の人間よりはエーテル量があることは分かっている。
使い魔のポークシーを1匹借り、軽度の者から順々に治療を行っていった。

ほど無くして、ガウラ達が戻ってきたが、その表情は暗かった。
聞けば、彼等は強い愛国心とプライド、歴史に囚われ、こちらを警戒するあまり怯え、最悪の結果をもたらしたと言うことだった。
それを聞き、なんとも言えない気持ちになった。
ガウラのメンタルが心配になり、声をかけようと歩き出した時、自分よりも早く後を追った者がいた。
見覚えのある顔。
それはヴァルだった。
恐らく、ガウラを護る為に潜入していたのだろう。
そして、自分が声をかけるより、ヴァルの方が腹を割って話せるだろうと判断し、アリスは踵を返したのだった。


***********


問題というのは立て続けに起こるもの。
1人の帝国兵が物資を盗みに現れたのだ。
それを見つけ、話を聞くために捕らえたが、やはりプライドが高く、警戒心も強い。

「ユルス・ピル・ノルバヌス。それ以上、侵略者にくれてやる情報はない」

と、この有様だ。

「ガレマルドの人々にとっては、命と未来を懸けた選択なんだ。私たちも、ちゃんと同じものを懸けよう」

話の末に、アルフィノが言い、行動を起こした。
ユルスの指名で、またもガウラとアルフィノ、アリゼーの3人はキャンプから避難民がいるであろう地に向かった。
何事も起こらぬよう、祈りながら、アリスはそれを見送り、テンパード化を解く治療をする為に戻った。
治療を進めていると、正気に戻り、起き上がれるようになった兵が1人現れた。
アリスは炊き出しのスープを、持っていくように頼まれ、帝国兵に持っていった。
だが………

「蛮族からの施しなど受けられるかっ!!」

差し出したスープの入ったカップを払われ、防寒具に掛かった。
それにめげず、もう一度スープを貰い、持っていく。

「お腹が空けば正しい判断も出来なくなります。何も悪いものは入っていません。スープを飲んで、少し落ち着きましょう?」
「五月蝿いっ!何度言われても、施しは受けんっ!!」

この強情さに、流石のアリスの堪忍袋の緒が切れた。

「いい加減にしてくださいっ!」

アリスの大声に、周りの者が一斉に2人を見た。

「いつまで意地を張ってるんですか!そうやって意地を張って、貴方達の祖先が築き上げてきた歴史を、ここで途絶えさせるんですか?!」
「なにを!?」

怒りを滲ませる帝国兵に、アリスは怯むことなく続ける。

「確かに、遥か昔に貴方達の祖先は住む場所を追われ、辛い思いをした!でも、それでも諦めず、一族を護る為、この極寒の地で生きていく術を編み出し、帝国と呼ばれる程の国を作り上げた!それを今、貴方は無にしようとしてるんですよ!!」
「!?」
「住む場所を追われたその悔しさもあるでしょう!エーテルが使えなくても、それに変わる魔導機械の技術は素晴らしいと思います。でも、今ここで歴史の恨みに囚われ、帝国が完全に無くなってしまったら、"異常な愛国心から、救いの手を振り払い滅亡した、愚かな帝国"と歴史に残ってしまいますよ?!」
「……我々を侮辱するのかっ?!」

帝国兵の言葉に、アリスは首を横に振り、先程とは打って変わって静かに言った。

「いえ、そうではありません。俺が言いたいのは、恨みで冷静さを失わないで欲しいんです。ここに集まった人達だって、帝国兵に虐げられたり、身内を殺された人もいます。でも、それでも、貴方達が置かれた状況を何とかしたいと、恨みを切り離して来てくれているんです」
「………」
「愛国心があるのなら、生きてください。国を愛する気持ちを間違った方向に向けないでください。貴方達が生きていれば、何度だってガレマール帝国は再生できるんです。子孫の繁栄を願った祖先の想いを、無にしないでください」

アリスの言葉に、帝国兵は俯き、考えている様だった。

「まだ体調が回復しきってないのに、声を荒らげてすみませんでした。スープ、ここに置いておくので、気が向いたら飲んでください」

そう言って、アリスは帝国兵に背を向けた。
長年、ガレアン人の歴史として植え付けられた恨みの念は、簡単に拭い去れないのは分かっている。
でも、どうしても、怒らずには居られなかった。
誰かを護る為ならまだしも、恨みやプライドで、助けられる者達が命を捨てて行くのが我慢ならなかった。





とある冒険者の手記

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