V.護る対象は形を変える
「うわぁぁぁああ!!」
キャンプ·ブロークングラスにガレアン人の悲鳴が響き渡る。
バブイルの塔から発せられたエーテル波で、ガレアン人がテンパードと化す。
そんな時、ヴァルの目に飛び込んできたのは、闇に包まれ消えるガウラと黒渦団員の姿だった。
その瞬間、ガウラが敵に捕まった事を悟ったが、襲いかかってくるテンパード化したガレアン人を対処する羽目になり、身動きが取れなかった。
騒ぎがある程度沈静化したのを見計らって、ヴァルは足早にキャンプを離れ、ヨルを呼び出し飛び乗った。
ガウラを追っていた頃、バルダム覇道でどさくさに紛れ、ヴァルもヨルを服従させていたのだ。
バブイルの塔を目指し飛んでいると、キャンプに向かって歩いているガウラの姿を見つけた。
だが、雰囲気がおかしい事に気がつく。
咄嗟にエーテル視を使うと、ガウラの身体から異なるエーテルが見えた。
それはゼノスのエーテル。
ゼノスがガウラの身体に入っていると知り、全身の血が逆流するような感覚に襲われる。
感情的になるのをグッと堪え、頭を働かせた。
(ゼノスがガウラの身体に入っているなら、ガウラの魂はどこに?!)
胸騒ぎを覚えつつ、エーテル視をしたままバブイルの塔を目指し、辺りに目を凝らす。
すると、市街地後から這いずりながら進むガウラのエーテルを見つけた。
急いでそこへ向かい、ヨルから飛び降りて駆け寄る。
「ガウラっ!!」
花の甘い香りが、見間違えではないと証明される。
だが、それと一緒に死臭も漂う帝国兵の身体。
それが今のガウラの姿だった。
「……ヴァル……か……」
「さっき、お前の身体を見た!魂を入れ替えられたのか?!」
ヴァルの言葉に、ガウラは腕にしがみついた。
「皆が…危ない…っ、早く…行かなきゃ……っ」
「っ!!」
その言葉にヴァルはガウラを担ぎあげ、ヨルに飛び乗る。
そして、手持ちからハイポーションを取り出した。
「気休めにしかならないかもしれないが飲め!」
兜の口の部分を何とかこじ開け、ガウラにそれを飲ませる。
軽く噎せながらも「すまない」と答える。
これで立てるぐらいにはなるだろう。
「また、自分だけが生きながらえてしまった…」
「…なに?」
「何故こうも……、私と共に戦った者たちは、先に逝ってしまうんだ…っ」
「………」
ゼノスを追ってる途中に何かがあったのを察したヴァル。
「安心しろ。お前が望むなら、あたいはお前より先に死なない。だが、後にも死なない。約束する」
「………」
ガウラがその言葉をどう受け止めたかは分からない。
その時、キャンプ付近にガウラの身体を乗っ取ったゼノスを見つけた。
見つからない所にガウラを降ろすと、ガウラはおぼつかない足取りで、気力を振り絞り、走り出した。
そして、ゼノスの行動を阻止し、無事に元の身体に戻ったのだった。
ガウラが戻り、バブイルの塔の内部が分かったことで、イルサバード派遣団は行動に出た。
それに紛れ、不滅隊員として作戦に潜り込む。
アニマを討伐するべく進むガウラを護る為、増援部隊を殲滅していく。
そして、近くで戦うアリスを見つけた時。
ガウラの言葉が頭をよぎった。
彼女の心の憂いを払う為、アリスの背後に背中合わせ立つ。
「怖気付いて無いだろうな?」
「まさか。その逆ですよ」
声をかければ、頼もしい言葉が返ってくる。
これで弱音を吐く様なら、蹴りのひとつでもお見舞いしてやろうと思っていたが、杞憂だったようだ。
「ヴァルさん、後ろは任せます!!」
「言われなくてもっ!!」
必ず護り抜く!
ガウラも
彼女の心も
彼女と共に戦う者達も!
その想いが、ヴァルに闘志を燃えさせた。
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