A.月に呼応し、白く染る


バブイルの塔を制圧し、ガウラがアニマの討伐を成功させた。
そして、そのままガウラが月に向かったと聞き、アリス達は1度キャンプに戻ることとなった。

1人で月へと向かってしまったことが心配ではあったが、後でサンクレッド、ヤ·シュトラ、ウリエンジェが後を追うとの事だったので、今は出来ることをしようと決めた。
塔で生きて捉えることのできた帝国兵を治療する為、キャンプに護送し、慌ただしくなる。
搬送が済み、一休みをする。
そして、義姉がいるであろう月を見上げる。

「義姉さん。大丈夫かな…」
「ガウラの事だ、無茶さえやらかさなきゃ心配はいらないだろ」

声に振り向くと、不滅隊の制服を着たヴァルの姿があった。

「だから心配なんじゃないですか…」
「…確かにな…」

流石のヴァルも、アリスの意見には同意せざるを得なかった。
その時、アリスは身体に違和感を覚えた。
体調不良ではない。
身体の、特に右脇腹に熱を感じた。

「なん……だ?」
「…どうした?怪我でもしたのか?」
「いや、そうじゃなくて……」

会話をしてる間にもどんどん右脇腹は熱くなっていき、次第に耐え難いものになって行った。

「ぐあっ………熱い……っ!!」

右脇腹を抑え、蹲るアリス。
流石のヴァルも動揺する。

「なんだ?!どうした?!」

ヴァルが慌ててアリスの手をどけ、服をめくり、右脇腹を確認すると、蝶の痣に変化が起きていた。
黒い蝶の痣は白く染っていく。
その間も、熱いと悶えるアリス。
それが白に染まり切ると、そのままアリスは気を失う。
急いでアリスを医療班に引渡し、事情を説明した。
痣が白く染まった以外は外傷はなく、直ぐに目が覚めるだろうと思われたが、アリスは静かに眠り続けている。

だが、ヴァルはアリスのある異変に気がついていた。

「…エーテルが変化した?…いや、あれは……アリスなのか?」

人気のないところで、ヴァルはそう呟いたのだった。





とある冒険者の手記

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