番外編·問題1つ


黒き一族の里で、ヴィラは若者達の相談に乗っていた。
儀式の失敗以降、掟の廃止に向けて、訓練の合間に一人一人の好きな事や、戦い以外の特技等を全て把握していた事もあり、新たな人生に向けての仕事の斡旋先が決まっていく。
だが、里の外に出る前に、各々準備が必要な事もあり、今もまだ若者達は皆、里に棲んでいる。

少し疲れを覚えたヴィラは、息抜きの為に里を出た。
向かう先は白き一族の集落跡だった。

「おや、息抜きに来たのかい?」
「あぁ、少しの間、お邪魔させてもらうよ」

丁度外に出ていたジシャに断りを入れ、適当な岩場を見つけて腰掛ける。
静けさと澄んだ空気に、大きく深呼吸して、緊張を解した。
そして、今抱えている1つの問題を考え始めた。
すると、その様子を察したのか、ジシャが話しかけてきた。

「悩み事かい?」
「あぁ、娘の事で少しな」

ヴィラは、小さく溜め息を吐いて話し始めた。

「実は、娘があちこち移動していて捕まらなくてね。向こうからの連絡はあるんだが、1箇所に留まって居ないせいで、こちらからの連絡がつけられない」
「なるほど。あの子に掟の廃止が伝えられていないのか」

ジシャの言葉に頷くヴィラ。
黒き一族の連絡方法は、鷹を使った報告書のやり取りだ。
人を送ろうにも、場所を転々としているせいで入れ違いにもなりかねない。

「今の世の中、時代が大きく動いている。そのせいもあるのだろう……。と、すまない。ジシャも忙しいのに、愚痴を聞かせてしまったな」
「いや、構わないさ」

そう言って、ヴィラは大きく背伸びをすると、ジシャに礼を言い立ち去った。

里の若者達の事を優先しつつ、早急に何とかしなければならないこの問題をどう解決するのか。
ヴィラはヴァルの報告書を待ちながら、考えるのだった。



とある冒険者の手記

FF14、二次創作小説 BL、NL、GL要素有 無断転載禁止

0コメント

  • 1000 / 1000