番外編·隠された歴史



白と黒の一族が暮らしていた時代。
白は魔力を、黒は武力を得意とし、お互いにその能力を補い合っていた。
時折、迷い込んで行き場をなくした者を集落に招き入れていた。
この一族には、変わった掟があった。
白と黒が婚姻を結ぶ時は純血同士か、混血同士でなければならない事、白の純血は10歳になったら儀式を行わなければならない事。そして、白の純血は決して集落周辺の一定の範囲以上は出てはいけないことだった。

そんな一族に、ある日変わった子供が生まれた。
白の純血であるのに魔力も武力も持つ子供。
とは言っても、武力はそこまで強くは無く、他の純血よりは武力が有るといった程度だったが、今までにない事だった。
その子供が10歳になり、儀式を行った時にそれは起きた。

儀式を行ったその子は、風脈に呑まれて消えた。
初めての儀式の失敗に、周りは動揺を隠せなかった。

更に数年後、また同じような子供が生まれた。
その子は、前の子供より武力を強く発揮していた。
そして、儀式の日。
またしても儀式は失敗。
今度は地脈に呑まれ、行方不明になってしまった。

そして、二度あることは三度あると言う言葉は、まさにその通りと言わざる得ない。

また更に数年して、同じような子供が生まれ、その子供も儀式を失敗していた。

これはただの偶然では無い。
そう判断した黒の直系であり、黒のリーダーは、リガン家と話し合った。

儀式の失敗の原因が、武力を持っていることであれば、これ以上、白と黒が血を混じえるのは危険だと訴えた。

武力を持っているからこそ、白の安全を護る役目がある黒。
その武力が白を危険に晒しているとなると、いたたまれなかった。

だが、その話し合いを聞き付けた頭の硬い連中が割って入り、話し合いは平行線を辿った。

そこから、数年置きに生まれる微量に武力を持った白の純血は、必ず儀式を失敗させ、犠牲になっていった。

そして、黒のリーダーが危惧していた事が起こった。
リガン家に産まれた娘、シーラ。
彼女は今まで産まれた子供達より武力が飛び抜けて強かった。
そして、魔力も……
儀式は今までにない酷い有様だった。
小さなヴォイドゲートが開かれ、数体の下級妖異の出現。
黒き者たちは下級妖異を殲滅したが、残ったヴォイドゲートを閉ざさぬ限り、妖異は出続ける。
次の妖異が出る前に、ゲートを閉じろと誰かが叫んだ。
黒のリーダーはやめろ!と叫んだが時すでに遅く、娘はゲートを閉じた。
そして、エーテルを使い果たし、消滅した。

黒のリーダーは、叫んだ人物の胸ぐらを掴んだ。
ただでさえ、儀式は魔力を消費する。
その状態でゲートを閉じれば、こうなる事は分かっていただろう!と、物凄い剣幕で捲し立てた。
こうするしか無かった!と言う相手に、大人が数人でゲートを閉じればよかっただろう!と言い返すと、相手はハッとして黙り込んでしまった。
怒りが収まらない黒のリーダーを宥めたのは、他でもないシーラの母だった。
そして、後日改めて話し合いの場を設ける事を決め、その場にいた者たちを解散させた。

その後、話し合いの結果、武力を持つ黒い一族は集落を出る事が決まった。
白と婚姻を結んでいた者も、それを切り、集落を出る事となる。
白と黒、お互いに新たな決まりと掟を作り、黒は集落から離れた場所に移り住んだ。

これが、黒き一族の始まりであった。


*************


書物を整理していたヴィラは、読んでいた本を閉じた。
その手は小さく震えていた。

一族の歴史が詰まった書物を整理しなければと、書物庫に足を運び、整理をしていたところ、本棚の裏に隠された小さな扉を見つけ、それを開けると出てきた本。
何の記録だと思い開いた結果、一族が別れるきっかけになった話が記録されていた。

「……何故、こんな重要な記録が隠されていたんだ?これを知っていれば、あんな事は起こらなかったはずなのに…」

そこでふと、ある考えが浮かんだ。
もしかしたら、まだ隠された記録があるかもしれない。
書物庫にあるのは一族が別れてからの物。
別れる前の物は、今手元にある本と、カ·ルナ·ティアの手記だけである。

「もし、また隠された物があるとすれば、族長が住んでいた家にある可能性があるな…」

元族長だった父が住んでいた家。
その家は族長になった者が住むことを許される。

ヴィラは見つけた本を片手に、足早に家へと向かったのだった。




とある冒険者の手記

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