V.ケーキ作り


ガウラ宅のキッチンで、調理器具を用意するヴァルの姿があった。
カルテノーの戦いの時に、リリンから回復をしてもらったお礼をどうしようか考えていた時に、ガウラから「以前、リリンがお菓子作りを教えて欲しいと言っていた」と教えられ、それをお礼にしようと決めた。
ガウラ伝に、何を作りたいのかを聞いてもらうと、パートナーの誕生日が近いので、ケーキの作り方を教えて欲しいとの事だった。
準備が終わった頃、玄関から「お邪魔しまーす!」「お!リリンいらっしゃい!」と2人のやり取りが聞こえた。
そして、リビングに入ってきた2人を出迎え、ヴァルはリリンに一礼をした。

「この前、助けてくれた事を感謝している」
「ううん!私はヒーラーだから、お仕事しただけだよ!」

笑顔で返事をするリリン。
その無邪気な笑顔に、つられて頬が緩んだ。

「それでは、ケーキ作りに取り掛かろう。エプロンは持ってきたか?」
「うん!持って来たよ!アリスお兄ちゃんが作ってくれたの!」

青をベースにしたフリルの着いた可愛いエプロンを取り出し、身に付けるリリン。
これをアリスが、いそいそと作っているところを想像したガウラとヴァルは、2人同時に小さく吹き出した。

「私、エプロン似合ってない?」
「……いや」
「エプロンは似合ってるよ」

不思議そうに聞くリリンに、2人は肩を震わせながら否定した。
笑いを収め、ケーキ作りを始めたヴァルとリリン。
作業の一つ一つを最初の少しだけやって見せ、あとはリリンにアドバイスを挟みながら教えてやらせるヴァル。
リリンは真剣に話を聞き、一生懸命だ。
そんな2人の様子を、ガウラは微笑ましそうに眺めていた。


**********


「これで完成だ」
「わーい!出来たぁ!凄い!」

初めて作ったケーキが完成して余程嬉しいのか、リリンはぴょんぴょん飛び跳ねた。

「ガウラお姉ちゃん!見て見て!」

嬉しそうにケーキを持ってくるリリン。
それを見て、ガウラはニッコリと微笑んだ。

「よく出来てるじゃないか!凄いな!」
「えへへ!ヴァルお姉ちゃんが、分かりやすく教えてくれたから!」

2人がヴァルの方を見ると、少し照れくさいのか、そっぽを向くヴァル。

「礼として教えるのに、いい加減に教えるわけないだろ」

そんなヴァルを見て、2人は小さく笑った。
そして、ヴァルはお茶の準備を始め、リリンはヴァルの指示でケーキ皿とフォーク、ティーカップを用意し、テーブルに並べる。
ヴァルはティーポットを持って出てきた。
カップに暖かい紅茶を注ぐ。

「砂糖とミルクは各自で入れろ」

そう言って、ティーポットをテーブルに置くと、キッチンへと戻ろうとする。

「ヴァルは食べないのかい?」
「片付けがある」
「そんなの後にして、3人で食べよう」
「………わかった」

家主にそう言われ、片付けを後回しにして席に着いた。
ケーキを切り分け、全員の皿に盛り付けられると、3人ともケーキを口に運んだ。

「うん!スポンジって失敗することが多いって聞くけど、しっかり焼けてるじゃないか」
「そうなの?失敗しなくて良かったぁ!」
「あたいが教えてるんだ、失敗なんてさせないさ」
「ところで、この生クリーム、一般的な物に比べて、甘さ控えめじゃないかい?」
「ガウラ、甘いもの苦手だろ?だから今回は砂糖を調整した」
「それはありがたいな」

すると、ヴァルは1枚の紙を取り出し、リリンに渡した。

「ケーキの作りの材料と手順を書いたレシピだ。材料の分量は今回作った物より砂糖の分量が違うだけだ。注意点なんかも書いてあるから、今度パートナーに作る時に参考にすればいい」
「わー!ヴァルお姉ちゃん、ありがとう!」

リリンは貰ったレシピを大事そうにカバンにしまう。

「もし、作ってる時に分からなくなったら連絡してこい。これがあたいの連絡先だ」

トームストーンを取り出し、お互いに連絡先を交換した。
その後は、和やかなお茶会になったのだった。




とある冒険者の手記

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