A.賢具の調整
オールド·シャーレアン、バルデシオン分館のナップルームへと戻ってきたアリス。
中に入ると、荷物を纏めるヘリオの姿があった。
「ヘリオ、ただいま!」
「アリスか、おかえり。姉さんは?」
「義姉さんは、終末の原因を調べに第一世界から古代へと向かったよ」
「そうか」
相変わらず無表情のまま、荷物を纏めているヘリオ。
テーブルにあった書物はすっかり無くなっており、スッキリとしている。
「荷物を纏めてるってことは、賢学の習得は終わったのか?」
「あぁ。だが、ひとつ問題がある」
「問題?」
「賢具が俺の魔力の量に耐えられん。魔力を送る量をコントロールはしているが、少しでも力を入れすぎると賢具の許容量をオーバーして亀裂が入る」
そう言って、アリスに賢具を見せた。
確かに、亀裂が入っており、このまま使うのは難しそうだった。
アリスは少し考え込み、口を開いた。
「それ、もしかしたら何とかなるかも」
「どういう事だ?」
「ほら、俺も独学でエーテル学を学んでただろ?それと一緒に他のクラフターも熟練度上げてたんだ!賢具に流れ込む魔力量を調整する機能を付けられるかも!」
「ほう。たしかに、そう言った機能があれば、コントロールに気を取られなくて済むな…。頼めるか?」
「うん!やってみるよ!」
早速、アリスは作業に取り掛かった。
元々手先が器用なのもあり、試作品は割と早く出来上がった。
そこから試運転、調整を繰り返し、そんなに日数もかからず賢具の調整は終わった。
「どう?使い心地は」
「扱いやすいし、何より魔力量を気にしないことで余計な考えをしなくて済む。助かった」
「いいえ!どういたしまして!それで、ヘリオはこれからどうするんだ?」
「特にする事はないな」
「じゃあさ、賢者の練習も兼ねて、各地の様子を一緒に見に行こう!義姉さんが帰ってくるまでの情報収集!」
アリスがそう言うと、少し面倒くさそうな顔をしたが、溜め息を吐きながらヘリオは「分かった」と答えた。
暁の活動に手を貸すつもりは無いが、正直なところアリス1人で行かせるのは不安なところがあったのだろう。
アリスも、ガウラに負けないぐらいに無茶をするからだ。
「じゃあ、皆に連絡入れて、行くところ決めなきゃ!」
そう言って、アリスはリンクパールで連絡を取り、目的地を決めてヘリオと行動を始めたのだった。
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