V.降神祭2023


ヴァルは元の女の姿に戻っていた。
年末は家の大掃除等をする為、外に出ることが減ったからだ。
そして、パートナーのガウラは、普段家に居ることが少ないのだが、最近は充電期間なのか外に出ようとせず、家の中でのんびりと過ごしている。
以前から時々、のんびり過ごしていることはあった。
それでも、家の中で何かしら作業をしたりしていたが、今回はそれもない。
恐らく、世界を救う程の戦いの後の精神的な疲れが今になって出たのだろうと、パートナーであるヴァルは結論づけた。
だが、少しは外に出て気分転換も必要だと考えたヴァルは口を開いた。

「ガウラ、降神祭の予定はあるかい?」
「んぇ?あー、もうそんな時期か…」
「その様子だと、何も予定は無いな」
「んー、そうだね」

脱力気味にテーブルに突っ伏しながら話すガウラ。
かなり気力が無いようだ。

「降神祭、アリス達も誘って行かないか?」
「アリス達も?ヴァルからそんなこと言うなんて、珍しいね」
「年始に、親族で集まるのも悪くないだろ」
「そうだなぁ、最近あまり外に出てなかったし、降神祭は行くかなぁ」
「分かった。じゃあ、あたいからアリス達に連絡しとく」
「うん、頼んだよ」

テーブルに突っ伏したまま、手を挙げてヒラヒラと振る彼女に、少し困ったような笑みを浮かべたヴァルは、アリスに連絡をとったのだった。


***********


リムサ・ロミンサの上甲板層。
冒険者ギルド前の都市内エーテライト前に、ヴァルとガウラは立っていた。

「義姉さん!ヴァルさん!」

手を振りながら大声で駆け寄ってきたのはアリス。
その後ろでマイペースに歩くヘリオ。
この光景は、既におなじみになっていた。

「お待たせしてすみません!」
「こっちが早く来すぎただけだから、気にするな」

アリスの言葉にそう返事をするガウラ。
今年の降神祭は、おみくじが出来るとの事で、4人で運試しをすることになった。
4人はおみくじを同時に広げた。

「俺は吉だ」
「あたいは小吉だな」

アリスとヴァルは無難な結果だったようだ。

「ヘリオは?」
「大吉だ」
「おおー!凄い!」

ヘリオの引いたおみくじの結果を、自分の事のように喜ぶアリス。
そんな様子の2人を他所に、ヴァルがガウラを見ると、複雑そうな表情でおみくじを見つめていた。

「ガウラ?どうだった?」
「………凶」
「………」
「………」
「………」

結果を聞いて、一瞬沈黙する3人。
その沈黙を破ったのはアリスだった。

「義姉さん、逆に良い事ありそうじゃないですか!」
「はい?何言ってんだい?」
「だって、凶の下って大凶しかないんですよね?これから運気が上がって行くかもしれないし、もし下り坂でも、直ぐに運気が上がるってことじゃないですか!」
「ふむ、一理あるな」

アリスの言葉にヴァルも賛同する。

「あたいが昔、おみくじに関して聞いた話だが、凶や大凶は入っている数が少ないらしい。それを引き当てたって事は、逆に運が良いのかもしれないな。もしくは、悪い運気をおみくじで減らしたとも考えられる」
「…………なるほど?要は考え方次第ってやつかい?」
「そういう事だ」

ヴァルの話を聞いて、ガウラの少し表情が和らいだ。
それを見て、アリスもヴァルも安堵した。
その後、4人でレストラン·ビスマルクで食事をし、話に花を咲かせたのだった。




とある冒険者の手記

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