V.不安

星界からガウラが帰還し、明日にはメーティオンのいる場所へと向かうことが決まった。

その日はそれぞれが明日に備えて思い思いに過ごしていた。

夜になり、ガウラがナップルームで過ごしていると、窓からヴァルが入ってきた。


「いよいよ明日だな」

「あぁ」

「アリスから渡されたペンダントは持ってるか?」

「持ってるよ。すっかり返すのが遅くなってしまった。すまないね」


そう言って、ガウラはペンダントをヴァルに手渡す。

それを受け取ると、ヴァルはクリスタルの部分を握り、何かの魔法を込めた。

そして、ガウラにペンダントを差し出した。


「?」

「まだ持ってろ。今回も、あたいはお前に着いて行けない。護ってやれない」

「掟は無くなったんだろう?」

「掟関係なく、あたいはお前を護りたいんだ」

「全く、仕方の無い奴だな」


ガウラは苦笑しながらペンダントを受け取り、それを腕に巻いた。


「何の魔法を込めたんだい?」

「レイズだ」

「……心配しすぎじゃないかい?」

「保険だ。妙な胸騒ぎがしていてな」


珍しく弱々しい表情のヴァルに、ガウラは困った顔をした。


「備えあれば憂いなしというだろ?」

「まあね。と言うか、白魔法の習得が早すぎないかい?」

「黒の純血とは言え、ニア様の血も混ざっているからな。そのせいだろう」

「なるほど」


すると、ヴァルはガウラを抱きしめた。

突然のことにガウラは驚く。


「なっ?!」

「ガウラ…必ず生きて帰って来い…」


抱きしめる腕に力が籠る。

その腕は、少し震えていた。


「あぁ、分かったよ」


ガウラは宥める様に、ヴァルの背中を撫でたのだった。

とある冒険者の手記

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