A.強大な敵に立ち向かう者達

アイティオン星晶鏡。

暁の血盟のメンバーとガウラ、アリス、ヘリオは魔導船ラグナロクの前にいた。

乗船できるのは8人と言われ、アリスは乗船を辞退した。


「じゃあ、行ってくるよ」

「義姉さん、気をつけて!」

「無茶するなよ」

「わかってるよ」

「みなさん、義姉さんをよろしくお願いします!」

「お前は私の保護者かい?!」


そのやり取りを見て、メンバーは小さく吹き出した。

そして、8人はメーティオンの居る宙の彼方へと出発して行った。

見送りが終わり、バルデシオン分館のナップルームでヘリオと2人でガウラの無事を祈りながら待機していた。


「少しは落ち着いたらどうだ?」


アリスの落ち着かない様子に、ヘリオは声をかける。


「なんか、心配でさ」

「心配しても、状況は変わらなだろ」

「そうなんだけどさ…」

「気持ちはわからなくないな」

「え?」


ヘリオとは違う声に驚くと、窓からヴァルが姿を現した。


「ヴァルさん」

「あれはどれだけ注意しても、無茶をやらかす」

「……」


ヴァルの言葉にヘリオすら言葉が出ない。


「だが、無事を信じるしかあたい達には出来ないんだ。ここもいつ終末に見舞われるか分からない。不安を抱えるのは危険だ」

「そう…ですね…」


不安は己を異形の魔物へと変化させる。

気を強く持つしかないのだ。


「ガウラなら大丈夫だ。多少の無茶はしても、必ず戻ってくる。今までもそうだったんだ。それに保険もかけておいた」

「保険?」


聞き返したが、ヴァルは保険がなんなのかは答えなかった。

ガウラの無事の帰還を祈りながら、思い思いに過ごしていると、3人は突如光に包まれた。


「な、なんだ?!」

「これは…アゼムの召喚魔法だ」


アリスの言葉にヘリオが答えた瞬間、3人はナップルームから姿を消した。

次に3人が見た光景。

色白で黒髪の巨大な女の顔。

足元には神竜。

そして、ガウラと見知った仲間達だった。

3人と同じように召喚されたのは、リリン、アリシラ、カル、サランだった。


「皆、呼び出してすまないね」

「頼ってくれて嬉しいです!義姉さん!」

「ガウラさんの力になれるなら、僕も嬉しいですよ」

「君には世話になってるからねぇ。恩を返すためにおじさん頑張っちゃうよ」

「私も頑張るよ!」

「私も、リリンちゃんが大好きなガウラさんのお役に立てるなら!」

「ガウラの為なら、あたいは全力を尽くすさ」


皆が口々にそう言った。


「皆、ありがとう」

「だが、これだとロールが偏るな」


ヘリオの言葉にリリンが反応した。


「私、リーパーやるよ!実は他のジョブも頑張ってたんだ!」

「リリンちゃん、凄く努力してるんですよ!リーパーと黒魔道士でダークカップル!なんちゃって!」


そう言って、リリンとアリシラが互いの両手を合わせる。

それを見て、皆が小さく笑う。

心做しか、ガウラの表情が和らいだようにも見えた。


「それじゃあ、あたいは戦士をやる。これで、ロールは問題ないだろ。アリス、お前はSTやれ」

「分かりました!」


ポジションが決まり、皆がガウラを見た。

ガウラは頷き、終焉を唄う者を見据えて言った。


「人は絶望に負けない!何度でも立ち上がれると証明するぞ!」


その言葉に皆が一斉に返事をし、終焉を唄う者へ立ち向かって行った。

とある冒険者の手記

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